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決算書から見る、世界の酒類メーカー|アサヒ編
酒類メーカーがノンアルコールをどう位置づけているのか。それを知るのに、決算書ほど正直な資料はない。 プレスリリースや広告では美しい言葉が並ぶが、決算書には数字と、投資家に向けた率直な説明が載る。どの事業に力を入れ、何を課題と見ているかが、そこに表れる。 今回取り上げるのは、日本のアサヒグループホールディングス。スーパードライで知られる、日本を代表する酒類メーカーである。そして2025年は、この会社にとって特殊な一年となった。最新の通期決算である2025年12月期の決算短信をもとに読み解いていく。 1. 会社の輪郭 創業から現在まで アサヒの歴史は1889年、大阪麦酒会社の設立に遡る。1906年には他社との合併で大日本麦酒が誕生し、戦後の1949年、過度経済力集中排除法によって同社が分割された際に「朝日麦酒」として再出発した。 転機は1987年のアサヒスーパードライ発売である。「辛口」という新しい価値提案が支持を集め、1998年にはビール類で国内シェア首位を獲得した。 2000年代以降は海外展開を加速させる。2016年から2017年にかけてSABミ

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2 時間前読了時間: 12分


WHOが掲げた"飲酒10%削減"は、どうなったのか
2025年は、ある国際目標の期限の年だった。 世界保健機関(WHO)が掲げた「有害な飲酒を10%削減する」という目標である。2013年に設定され、2010年を基準年として、2025年までの達成を目指していた。 この目標は、公衆衛生の世界だけの話ではない。酒類メーカー自身がこれを支援する形で自社の目標を掲げ、ノンアルコール製品への投資を進めてきた経緯がある。 つまり、いま私たちが目にしているノンアルコール飲料の広がりは、この国際目標と地続きのところにある。 では、期限を迎えて何が起きたのか。答えは、単純ではなかった。 そもそも、何を目指した目標だったのか この目標は、WHOのNCD(非感染性疾患)対策の枠組みの中で設定された。2011年に190カ国以上が合意した「NCDの予防と管理に関する世界行動計画」の一部である。 計画全体の狙いは、NCDによる早期死亡を2025年までに25%減らすこと。そのために九つの自主目標が設定され、そのうちの一つが飲酒に関するものだった。 正確な表現はこうだ。「各国の状況に応じて、有害な飲酒を少なくとも10%相対的に削減

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6 日前読了時間: 8分


決算書から見る、世界の酒類メーカー|AB InBev編
酒類メーカーがノンアルコールをどう位置づけているのか。それを知るのに、決算書ほど正直な資料はない。 プレスリリースや広告では美しい言葉が並ぶが、決算書には数字と、投資家に向けた率直な説明が載る。どの事業に力を入れ、何を課題と見ているかが、そこに表れる。 今回取り上げるのは、ベルギーのAB InBev(アンハイザー・ブッシュ・インベブ)。世界最大のビール会社であり、ノンアルコールについて明確な数値目標を公に掲げた、数少ない企業でもある。そして2025年は、その目標の期限の年だった。最新の通期決算であるFY2025(2025年12月期)の決算資料をもとに読み解いていく。 ※以下、円換算は便宜上1ドル=150円で計算している。 1. 会社の輪郭 創業から現在まで AB InBevは、合併と買収を重ねて築かれた会社である。 現在の形の直接の起点は2008年。ベルギーのインベブが、米国のアンハイザー・ブッシュを約520億ドルで買収して誕生した。さらに2016年、当時世界第2位だった英SABミラーを約1000億ドル規模で買収し、圧倒的な首位に立った。...

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9月2日読了時間: 10分


決算書から見る、世界の酒類メーカー|ディアジオ編
酒類メーカーがノンアルコールをどう位置づけているのか。それを知るのに、決算書ほど正直な資料はない。 プレスリリースや広告では美しい言葉が並ぶが、決算書には数字と、投資家に向けた率直な説明が載る。どの事業に力を入れ、何を課題と見ているかが、そこに表れる。 第二回は、英国のディアジオ。ビールを主軸とするハイネケンとは対照的に、スピリッツを中心とする世界的な酒類企業である。今回は最新の通期決算であるFY2026(2026年6月期)の決算資料とAnnual Report 2026をもとに解説していく。 ※以下、円換算は便宜上1ドル=150円で計算している。 1. 会社の輪郭 創業から現在まで ディアジオという社名を聞いてもピンとこない人は多いかもしれない。だがジョニーウォーカー、スミノフ、ギネス、タンカレーと並べれば、その存在感が分かるはずだ。 会社としての歴史は意外に浅い。1997年、ギネス社とグランド・メトロポリタンの合併によって誕生した。まだ30年に満たない会社である。 ただし傘下ブランドの歴史は古い。ギネスは1759年にダブリンで創業し、ジョニー

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8月26日読了時間: 12分


決算書から見る、世界の酒類メーカー|ハイネケン編
酒類メーカーがノンアルコールをどう位置づけているのか。それを知るのに、決算書ほど正直な資料はない。 プレスリリースや広告では美しい言葉が並ぶが、決算書には数字と、投資家に向けた率直な説明が載る。どの事業に力を入れ、何を課題と見ているかが、そこに表れる。 この連載では、世界の主要な酒類メーカーの決算資料を一社ずつ読み解いていく。第一回は、オランダのハイネケン。今回は最新の通期決算である2025年通期の決算資料をもとに解説していく。 ※以下、円換算は便宜上1ユーロ=185円で計算している。 1. 会社の輪郭 創業から現在まで ハイネケンの歴史は1864年に始まる。当時22歳のヘラルト・アドリアーン・ハイネケンが、アムステルダムの醸造所「デ・ホイベルフ(干し草の山)」を買収した。当時のオランダでは、ジンなどの蒸留酒が広く飲まれていた時代である。 1873年には「ハイネケン・ビール醸造会社」を設立。翌1874年にはロッテルダムに第二の醸造所を開設した。1886年には、パスツールの弟子であるエリオン博士が研究所で「ハイネケンA酵母」を開発する。この酵母は現

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8月24日読了時間: 13分


食料品減税で、ノンアルコールはどうなるか——2027年、売り場の価格差が動く
2026年8月5日、政府は臨時閣議で、飲食料品の消費税率を引き下げる基本方針を決定した。 2027年4月1日から2年間、現行の8%を1%とする内容だ。1989年の消費税導入以来、税率が下がるのは初めてとなる。 この減税には、明確な線引きがある。対象から外れるのは、外食と酒類だ。そしてこの線引きは、ノンアルコール飲料にとって、決して小さくない意味を持っている。 ノンアルコールは、どちら側に立つのか 結論から言えば、ノンアルコール飲料は減税の対象に入る見通しだ。 理由は、税制上の分類にある。軽減税率の対象から除かれる「酒類」とは、酒税法が定める酒類、すなわちアルコール分1度以上の飲料を指す。 ノンアルコール飲料はこの定義に当てはまらず、清涼飲料として扱われる。現行の軽減税率制度でも、ノンアルコールビールや甘酒は、ジュースなどと同じく8%が適用されてきた。 興味深いのは、アルコール分0.5%程度のいわゆる微アルコール飲料も、1度未満である以上は酒類に該当せず、同じ扱いになる点だ。 一方、アルコール分1〜3%程度の低アルコール飲料は酒類となり、標準税率が

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8月7日読了時間: 4分


サッカーとビール―当たり前が変わるとき
ワールドカップが、いよいよ佳境を迎えている。 ノルウェーのハーランド、そして今なお世界を魅了し続けるアルゼンチンのメッシ。スーパースターたちのプレーに、世界が沸いている。 ところでサッカーとビールと言えば。長年日本代表を支えてきたキリンのスポンサードに象徴されるように、分かちがたく結びついてきた。 スタジアムを埋める観客、パブに集まるサポーター、広告板を飾るビールブランド——サッカーとビールは、一体のものとして文化を築いてきた。 ところが近年、その光景に静かな変化が起きている。ノンアルコールが、脇役ではなく主役級の位置に現れ始めているのだ。 公式ビールの交代劇が示したもの その象徴が、世界で最も見られるサッカーリーグ、プレミアリーグで起きた。 2024/25シーズンから、プレミアリーグの公式ビールが、長年その座にあったバドワイザーからギネスへと交代した。 報道によれば約5200万ポンドとされる4年契約だが、注目すべきはその中身だ。 この契約で、ギネスの通常のスタウトが公式ビールになると同時に、"ギネス0.0"が「プレミアリーグ公式ノンアルコールビ

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7月8日読了時間: 5分


酒税法改正2026年10月、ビール系飲料の「常識」が変わる——「第三のビール」が役割を終える日
2026年10月、日本のビール系飲料をめぐる長年の「常識」が、ひとつの区切りを迎える。 ビール・発泡酒・第三のビールでバラバラだった酒税が、350ml缶あたり54.25円に統一されるのだ。 「ビールは高い、第三のビールは安い」——この当たり前だった図式が、いよいよ過去のものになる。そして大手4社は、そろって同じ方向に舵を切り始めた。「第三のビールを、ビールにする」という方向だ。 何が変わるのか 2026年10月の改正で、ビール系飲料の酒税は350ml缶あたり54.25円に一本化される。 これによりビールは減税、発泡酒・第三のビールは増税となる。 具体的には、ビールは約9.1円の減税(63.35円→54.25円)、第三のビール(新ジャンル)は約7.26円の増税(46.99円→54.25円)。 かつてビールと第三のビールの間には350ml缶あたり最大49円もの税額差があったが、それが完全に消える。 味や見た目が似ているにもかかわらず税負担が大きく異なる状況は、「税の公平性」という観点から長年の課題とされてきた。2026年10月の統一は、2020年・2

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6月9日読了時間: 4分


成長率で見るアルコールとノンアルコール──カテゴリー別比較2026
ノンアルコール飲料市場の話をするとき、最初に押さえておくべき事実がある。市場規模そのものは、アルコール飲料に遠く及ばない。 IWSRによれば、ノンアルコール飲料が総アルコール飲料(TBA)に占める割合は、主要10市場でもまだ3%程度(2028年予測)にすぎない。「市場が拡大している」とはいえ、絶対的な規模ではアルコールが圧倒的に大きいままだ。 しかし、市場規模だけを見ていると、見落とすものがある。それが「成長率」だ。市場の現在地ではなく、どちらに勢いがあるか——その差は、これから仕入れやメニューを設計する飲食店・バイヤーにとって、規模以上に重要な情報になる。 なぜ成長率で比較するのか 市場規模は「過去から現在までの積み上げ」を示す。一方、成長率(CAGR=年平均成長率)は「これからどちらに動くか」を示す。 成熟した大きな市場が横ばいなのに対し、小さな市場が二桁成長を続けているとき、その小さな市場は数年後に無視できない存在になる。今は小さくても、勢いのあるカテゴリーを早く押さえることが、競争優位につながる。 ノンアルコール飲料は、まさにこの「小さい

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6月8日読了時間: 5分


なぜ日本の飲料メーカーは新商品に積極的なのか——海外メーカーとの事情の違い
春には桜フレーバー、夏には期間限定の炭酸、秋には栗や芋を使ったドリンク、冬にはホット専用の新商品——日本の飲料棚は季節ごとに顔を変える。 コンビニの棚を毎週眺めていると、気づけば見たことのない商品が並んでいる。この光景は日本では当たり前だが、海外から来た人には驚きとして映ることが多い。 なぜ日本の飲料メーカーはこれほど頻繁に新商品を出せるのか? 海外との比較で語るときのその答えの一つが、日本の小売に存在しない「スロッティングフィー」という仕組みにある。 海外では新商品を出すのにお金がかかる スロッティングフィー(Slotting Fee)とは、メーカーが小売店の棚に新商品を置くために小売側に支払う一括前払いの費用だ。 小売側の論理はこうだ。新商品の80〜90%が失敗するという現実から、未実績商品を棚に置くリスクをメーカーと分担する仕組みとしてフィーが機能している。 米国・欧州のスーパーマーケットで広く行われている慣行で、FTC(米国連邦取引委員会)の調査でも「スーパーマーケット業界で広く行われている」と認定されている。 この慣行が生まれた背景は棚

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5月25日読了時間: 5分


なぜ日本のノンアルコール市場にスタートアップが生まれないのか——大手飲料メーカーの歴史が作った構造
2025年、米国のAthletic Brewingはノンアルコールビール市場でシェア12.8%以上を獲得し、市場リーダーに立った。2017年創業のスタートアップが、わずか8年で大手の牙城を崩した格好だ。 英国ではSeedlipが2015年に創業し、4年後の2019年にDiageoに買収された。 日本ではこうした事例が生まれていない。ノンアルコール飲料市場は2成長を続けているが、市場を牽引しているのはアサヒ・キリン・サントリー・サッポロの大手4社だ。NAスピリッツ・NAワインはほぼ存在しない。 この構造は偶然ではない。日本の飲料産業が100年かけて作り上げた必然だ。 大手4社がノンアルコールを先占した 日本のノンアルコールビール市場は大手4社が支配している。 キリンが2009年に世界初の0.00%ビールテイスト飲料「キリン フリー」を発売し、サントリーが2010年に「オール・フリー」、サッポロが2011年に参入した。欧米でノンアルコールビールが本格的に普及し始める前に、日本の大手はすでに市場を作っていた。 Just Drinks誌はこの構造を端的に

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5月22日読了時間: 5分


"Microtail"とは何か——モクテルでもカンナビスでもない飲み物が、社交の場を変えるかもしれない
※本記事で紹介するTHC(テトラヒドロカンナビノール)含有飲料は、日本では麻薬及び向精神薬取締法により、残留限度値を超えるTHCを含む製品の製造・販売・所持が禁止されています。本記事はグローバルのトレンドとして紹介するものです。 2026年4月、米バーモント州のスタートアップCleannが「Microtail(マイクロテール)」という言葉を打ち出した。聞き慣れない言葉だが、「マイクロドーズ・モクテル」の略だ。 THCとCBDを微量配合したノンアルコール飲料で、1缶あたりTHC 1mg・CBD 15mgという設計。リンゴサイダーをベースに軽く炭酸を加えた、見た目は普通のクラフトドリンクだ。 なぜ「モクテル」でも「カンナビス飲料」でもなく、新しい言葉が必要だったのか。 そこにこの飲み物の本質がある。 モクテルでもなく、カンナビスでもない 「モクテル」という言葉は英語圏の人からするとフェイクを想起させる言葉だ(※「 『モクテル』という言葉を、世界のバーテンダーは嫌っている 」参照)。 一方「カンナビス飲料」という言葉は、医療や娯楽目的のカンナビス消費と

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4月21日読了時間: 3分


飲料の「カテゴリー」が問い直されている——サントリーの新戦略が示す、市場の構造転換
飲料市場には長らく、自明の分類があった。 ビール、ワイン、スピリッツ、コーヒー、お茶、炭酸飲料、スポーツドリンク。 消費者はカテゴリーを選び、その中でブランドを選んでいた。 メーカーはカテゴリーごとに棚を争い、競合を定義し、マーケティングを組み立てていた。 その前提が、静かに問い直されつつある。 サントリーが言語化したこと 2026年4月、サントリービバレッジ&フードは「新価値創造プロジェクト」方針を発表し、「ウエルネスケア」と「ムードシフト」の2つを新たな価値軸として打ち出した。 この発表の本質は、新商品を出すということではない。飲料の選択軸が変わったという認識を、日本最大手のメーカーが明示的に宣言したことだ。 リリースの中でサントリーはこう述べている。 「飲料の選択軸は、コーヒーやお茶といった従来の『カテゴリー軸』に加えて、心身にもたらす機能的な価値や、気分・利用シーンに基づく情緒的な価値といった『飲用によって得られる価値を起点とした軸』が台頭しています」 「カテゴリー軸」ではなく「価値軸」——この表現は、従来の市場構造の問い直しを示唆してい

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4月16日読了時間: 5分


烏龍茶はなぜ、夜の店から広まったのか——日本のノンアルコール市場の「原点」を辿る
1981年、サントリーが缶入り烏龍茶を発売したとき、誰もこれが日本のノンアルコール市場の原点になるとは思っていなかった。 きっかけは偶然に近かった。もともとウイスキーを飲食店に卸していたサントリーが、同じルートで烏龍茶も提供し始めた。すると、スナックやバーで働くホステスたちがこの飲み物を重宝し始めた。 理由はシンプルだ——色がウイスキーに似ていたからだ。 お酒が飲めない、あるいは飲みたくない。でも場の雰囲気は壊したくない。 グラスに琥珀色の液体が入っていれば、客の前でもウイスキーを飲んでいるように見える。 このきわめて実用的なニーズが、烏龍茶を夜の店に定着させた。そしてホステス経由で客にも「健康にいい飲み物」として口コミで広がり、やがて居酒屋・レストランへと波及していった。 「場を壊さない」という需要は、40年前からあった この歴史が示すのは、「場の空気を壊さずに飲めるノンアルコール飲料」へのニーズは、今に始まった話ではないということだ。 1981年当時、日本に選択肢はほとんどなかった。コーラやジュースは「子どもの飲み物」というイメージがあり、水

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4月6日読了時間: 4分


成長市場で、勝つスタートアップ、苦しむスタートアップ——ノンアルコール業界から読む、カテゴリー開拓の現実
市場が成長していれば、ビジネスもうまくいく——そう思いたいところだが、現実はそう単純ではない。 ノンアルコール飲料市場はここ数年、世界的に急成長を続けている。消費者の健康意識の高まり、若年層の飲酒離れ、Dry Januaryの定着——追い風は揃っている。 それでも、この市場で戦うスタートアップの多くが、資金難に陥っている。 Boissonの破産が示したこと 2024年4月、米国のノンアルコール専門小売Boissonが連邦破産法第11条の適用を申請し、全8店舗を閉鎖した。 Boissonはノンアルコール飲料専門の「聖地」として注目を集め、ペルノ・リカールのベンチャー部門を含む投資家から、少なくとも1,700万ドル以上の資金を調達していた。 2023年の売上は小売・ECを合わせて約1,100万ドル。数字だけ見れば成長軌道にあった―しかし資本が尽きた。 創業者のNicholas Bodkinsは破産申請後のLinkedInへの投稿でこう述べた。 「これはノンアルコールカテゴリーの失敗ではない。成長しすぎた、失敗したベンチャー投資スタートアップの話だ」.

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4月2日読了時間: 5分


不確実な時代に、アルコール市場はどう変わるか——過去の危機から読む、飲食店が知っておくべき構造変化
アルコール市場は長らく「景気に左右されにくい」と言われてきた。 不景気でも人は飲む、という俗説だ。 だが歴史を振り返ると、実態はもう少し複雑だ。そして今、その複雑さがかつてないほど前景化している。 リーマンショック(2008年)——「量」は守られたが、「中間」が消えた 2008年の金融危機は、アルコール市場に確かなダメージを与えた。 IWSRのデータによれば、危機前5年間(2003〜2008年)の世界アルコール市場の年平均成長率は1.0%だったが、危機後5年間(2008〜2013年)は0.1%まで失速した。 だが注目すべきはその中身だ。量の減少は限定的だった一方で、消費の構造が変わった。 ビールが大きく打撃を受け(2007年の6%成長から2009年の1%減へ)、スピリッツは相対的に堅調を維持した。 そして「価格帯の二極化」が起きた。標準価格帯の製品が苦戦する一方、超プレミアムと最安値帯の両端が生き残る。 消費者は「少なく飲んで、より良いものを選ぶ」か「とにかく安く済ませる」かの二択に収斂していった。 日本でも、リーマンショックの影響が数字に顕著に

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3月31日読了時間: 5分


EUがノンアルコールワインに「お墨付き」を与えた日——規制変更が業界に何をもたらしたか
2023年1月、欧州のワイン産業に静かな地殻変動が起きた。 EUの新農業政策の一環として成立したRegulation (EU) 2021/2117が本格適用を開始し、長年にわたって閉じられていた扉が開いた―原産地呼称保護および地理的表示保護を持つワインに対しても、脱アルコール処理が正式に認められたのだ。 フランスのボルドー、イタリアのキャンティ、スペインのリオハ。ヨーロッパのワイン文化を象徴するこれらの産地名を冠したワインが、ノンアルコール版として市場に出ることができるようになった。 規制変更以前——「格付けワイン」は手が出せなかった この変化の意味を理解するには、以前の規制がどれほど厳しかったかを知る必要がある。 EUは2009年から部分的な脱アルコール処理を認めていたが、対象は「格付けなしのジェネリックワイン」のみに限定されていた。 原産地呼称保護や地理的表示保護といった地理的表示を持つワイン——いわゆる銘柄ワイン——への脱アルコール処理は明確に禁じられていた。 さらに当時の規制では、アルコール低減は元のアルコール度数の20%までに制限され、

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3月30日読了時間: 4分


ボトル?グラス?ペアリング?——提供形式が変える、客単価と体験の設計
ノンアルコール飲料をメニューに加えた。商品も揃えた。でも思ったより売れていない——そういう声を飲食店から聞くことがある。 原因はいくつか考えられるが、見落とされがちなのが「提供形式の設計」だ。何を売るかではなく、どう出すか。これがノンアルコールの売上と体験の質を大きく左右する。 「グラス売り」の強みと限界 最もシンプルな提供形式はグラス売りだ。 1杯単位で注文でき、お客様にとって試しやすい。ノンアルコールに馴染みのない人への入り口として機能しやすいのが強みだ。 ただしグラス売りには構造的な課題がある。 1杯あたりの単価を上げにくいことと、「とりあえず1杯」で終わりやすいことだ。 アルコール飲料であれば食事の進行とともに追加注文が自然に発生するが、ノンアルコールはそのサイクルが回りにくい傾向がある。 これを補うには、一皿一ドリンクといったセットとの組み合わせか、複数グラスを前提とした提案が有効になる。「本日のペアリングノンアルコール」として各料理に合わせた1杯を順番に提供する形は、グラス売りの単価課題を解決しつつ、体験としての価値も高められる。 「

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3月25日読了時間: 4分


ノンアルコール市場で起きている「二極化」——なぜ高価格帯と低価格帯に分かれるのか
ノンアルコール飲料の市場が成長している、という話はよく聞く。だが「どう成長しているか」まで踏み込んで理解している人は少ない。 今、この市場では見逃しにくい構造変化が起きている。 高価格帯と低価格帯が同時に伸び、その間にあった「中間」が薄くなる——いわゆる二極化だ。これはアルコール市場全体で起きているプレミアム化の流れと、ノンアルコール固有の事情が重なった結果であり、飲食店がノンアルコールメニューを設計するうえで無視できない動きだ。 まず「量より質」という大きな潮流がある 背景として押さえておきたいのが、アルコール市場全体の変化だ。 IWSRによれば、世界の飲料アルコール市場は2024年に量が1%減少した一方、金額は1%増加した。「量は減っても、お金は使う」。消費者が「少なく飲んで、より良いものを選ぶ」という行動に移行していることを示している。 この潮流はノンアルコール市場にも波及している。IWSRはノンアルコールビール・ワイン・スピリッツにおいて、「プレミアム以上の価格帯が成長の主要な牽引役になっている」と指摘する。量が伸びているだけでなく、単価

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3月24日読了時間: 4分


ノンアルコールをメニューのどこに置くか——心理学が教える、注文率を変える小さな設計
「ノンアルコールのメニューは一応ある。でも正直、あまり注文されない」 こう話す飲食店のオーナーやバーテンダーは少なくない。選択肢を用意することと、それが実際に選ばれることは、別の問題だ。 ノンアルコール飲料を「置く」という意思決定をした後に、多くの店が見落としているのがメニューの設計だ。どこに載せるか、どう書くか、どう価格を見せるか。こうした細部が注文率に影響する可能性がある——行動科学とメニュー工学の研究が、そのヒントを与えてくれる。 消費者はメニューをどう「読む」か まず前提として、客はメニューを上から下へ順番に読まない。 アイトラッキング技術を使った研究によると、消費者の視線はメニューを「読む」のではなく「スキャン」する。 その動きには一定のパターンがあり、視線は最初にページの中央へ向かい、次に右上、そして左上へと移動する傾向がある。この三角形の領域は「ゴールデントライアングル」と呼ばれ、メニュー設計において最も目に触れやすいゾーンとされている。 また、心理学における「系列位置効果」の知見も参考になる。Cambridge Coreに掲載され

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3月20日読了時間: 5分
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