top of page

成長率で見るアルコールとノンアルコール──カテゴリー別比較2026

ノンアルコール飲料市場の話をするとき、最初に押さえておくべき事実がある。市場規模そのものは、アルコール飲料に遠く及ばない。


IWSRによれば、ノンアルコール飲料が総アルコール飲料(TBA)に占める割合は、主要10市場でもまだ3%程度(2028年予測)にすぎない。「市場が拡大している」とはいえ、絶対的な規模ではアルコールが圧倒的に大きいままだ。


しかし、市場規模だけを見ていると、見落とすものがある。それが「成長率」だ。市場の現在地ではなく、どちらに勢いがあるか——その差は、これから仕入れやメニューを設計する飲食店・バイヤーにとって、規模以上に重要な情報になる。

成長率で見るアルコールとノンアルコール──カテゴリー別比較2026
なぜ成長率で比較するのか

市場規模は「過去から現在までの積み上げ」を示す。一方、成長率(CAGR=年平均成長率)は「これからどちらに動くか」を示す。


成熟した大きな市場が横ばいなのに対し、小さな市場が二桁成長を続けているとき、その小さな市場は数年後に無視できない存在になる。今は小さくても、勢いのあるカテゴリーを早く押さえることが、競争優位につながる。


ノンアルコール飲料は、まさにこの「小さいが勢いのあるカテゴリー」だ。


各カテゴリーをアルコール版と並べて見ると、その差は鮮明になる。

カテゴリー別比較──ノンアルコールはすべての領域でアルコールを上回る

IWSRのデータをもとに、主要カテゴリーのアルコール版とノンアルコール版の成長率(CAGR)を並べてみる。


  • ビール

アルコールビールは、IWSRの最新予測で-3%(2024-2029)と、明確な縮小局面に入っている。


対してノンアルコールビールは+7%(2024-2028)、米国に限れば+18%(2024-2029)という高成長が予測されている。


ノンアルコールビールはノンアルコール市場の中で最も成熟しており、絶対量でも牽引役だ。IWSRは、ノンアルコールビールが2025年中に世界で2番目に大きいビールカテゴリーになると予測している。

  • ワイン

アルコールワイン(スティル)は構造的な縮小が続いており、-1%(2023-2028)の減少予測。2019-2024の実績では主要20市場でワイン全体が-21%という厳しい数字も出ている(もちろん、この時期にコロナの影響が大きかったことは疑いようがないが)。


一方ノンアルコールワインは+5%の成長が予測されている。技術的に味の再現が難しいカテゴリーながら、縮小するアルコールワインとは対照的な勢いを見せている。

  • スピリッツ

アルコールスピリッツは2023-2028で+1%程度の緩やかな成長。


対してノンアルコールスピリッツは+7%の成長が予測されている。


ジン・ウイスキー・アガベ系などのノンアルコール版が新規参入を続けており、Seedlipに代表されるこのカテゴリーは、市場の認知拡大とともに伸びている。

  • RTD

アルコールRTDはアルコールカテゴリーの中では数少ない成長領域だが、最新予測では+1%(2024-2029)に下方修正されている。


対してノンアルコールRTDは+10%(2024-2028)と、それを大きく上回る。手軽さと多様なフレーバーを武器に、ノンアルコール市場の中で最も速く成長するカテゴリーの一つだ。



これらを並べると、IWSR自身の結論が腑に落ちる。「ノンアルコールカテゴリーは、すべてのセグメントで通常度数版を上回る成長を見せている」。


総アルコール飲料が+1%(2024-2028)の微増にとどまる中、ノンアルコール飲料全体は+7%で伸びている。

カテゴリー

アルコール版

ノンアルコール版

ビール

-3%(2024-2029)

+7%(2024-2028)

ワイン

-1%(2023-2028)

+5%(2024-2028)

スピリッツ

+1%(2023-2028)

+7%(2024-2028)

RTD

+1%(2024-2029)

+10%(2024-2028)

全体(TBA)

+1%(2023-2028)

+7%(2024-2028)

※アルコール版とノンアルコール版で出典レポート・対象期間に一部ズレがあるため、厳密な同一条件比較ではなく傾向の比較として参照されたい。いずれもIWSRデータに基づく。

日本市場の特殊性

ただし、このグローバルトレンドをそのまま日本に当てはめることはできない。


日本のノンアルコール市場はビールテイスト飲料に極端に偏っている。ノンアルコールビールは大手4社が早くから市場を作り成熟しているが、ノンアルコールワイン・ノンアルコールスピリッツはほぼ存在しないに等しい。


グローバルで+5%成長しているノンアルコールワイン、+7%成長しているノンアルコールスピリッツが、日本では市場としてまだ立ち上がっていない。


これは裏を返せば、日本ではビール以外のノンアルコールカテゴリーが「空白地帯」として残っているということでもある。グローバルで証明されつつある成長カテゴリーが、日本ではまだ本格的に開拓されていない。

飲食業界への示唆

成長率の差は、飲食店・バイヤーにとって具体的な意味を持つ。


第一に、ノンアルコールメニューを「ビールテイスト1種類」で済ませる時代は終わりつつある。


グローバルではノンアルコールワイン・スピリッツ・RTDがいずれも二桁に近い成長を見せている。食事に合わせるノンアルコールワイン、バーで提供するノンアルコールスピリッツ——これらの需要は今後確実に高まる。

第二に、日本市場の「空白」は先行者にとっての機会だ。グローバルで成長が実証されているカテゴリーが日本でまだ手薄なら、早く取り入れた店舗・バイヤーが差別化できる。特にノンアルコールワインとスピリッツは、ペアリングやバー需要と結びつけやすい。

第三に、成長率は「消費者の意識の方向」を映している。ノンアルコールがすべてのカテゴリーでアルコールを上回るということは、「飲まない選択」が一過性のブームではなく構造的な変化であることを示している。この流れに合わせた仕入れ・メニュー設計が、これからの数年で効いてくる。

市場規模ではまだ小さい。しかし、勢いはノンアルコールにある。その勢いをどう取り込むかが、これからの飲食店・バイヤーの課題になる。


参考資料


bottom of page