ノンアルコール市場で起きている「二極化」——なぜ高価格帯と低価格帯に分かれるのか
- alt-alc,ltd.

- 3月24日
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ノンアルコール飲料の市場が成長している、という話はよく聞く。だが「どう成長しているか」まで踏み込んで理解している人は少ない。
今、この市場では見逃しにくい構造変化が起きている。
高価格帯と低価格帯が同時に伸び、その間にあった「中間」が薄くなる——いわゆる二極化だ。これはアルコール市場全体で起きているプレミアム化の流れと、ノンアルコール固有の事情が重なった結果であり、飲食店がノンアルコールメニューを設計するうえで無視できない動きだ。

まず「量より質」という大きな潮流がある
背景として押さえておきたいのが、アルコール市場全体の変化だ。
IWSRによれば、世界の飲料アルコール市場は2024年に量が1%減少した一方、金額は1%増加した。「量は減っても、お金は使う」。消費者が「少なく飲んで、より良いものを選ぶ」という行動に移行していることを示している。
この潮流はノンアルコール市場にも波及している。IWSRはノンアルコールビール・ワイン・スピリッツにおいて、「プレミアム以上の価格帯が成長の主要な牽引役になっている」と指摘する。量が伸びているだけでなく、単価が上がっている。
高価格帯で何が起きているか
ノンアルコールスピリッツ市場では、プレミアム以上の価格帯が最も大きなシェアを占めているとIWSRは報告している。1本30〜40ドル(約4,500〜6,000円)前後の製品が、カテゴリーを牽引している状況だ。
なぜこの価格帯が成立するのか。ひとつは製造コストの問題だ。
インフュージョン方式や高度な脱アルコール技術を用いた製品は、原材料の調達から製造プロセスまでコストが高い。
もうひとつは「ノンアルコールを選ぶことへの意味づけ」の変化だ。健康意識・素材へのこだわり・飲む体験の質——これらを重視する消費者にとって、価格は品質のシグナルになる。
NielsenIQはノンアルコール飲料市場において、「プレミアムポジショニング」を採るブランドが今後の成長をリードすると予測している。
一方で、大手による低価格帯参入も加速している
プレミアム化が進む一方、市場の反対側でも動きがある。大手アルコールメーカーによるノンアルコール製品の本格参入だ。
AB InBevは2025年末までに全ビール生産量の20%をノンアルコール・低アルコール製品にする目標を掲げ、Heinekenは主要市場の90%でゼロアルコール版を展開している。Carlsbergも2030年までに低・ノンアルコールビールを全体の35%にする計画だ。
大手が本気で参入することで何が起きるか。流通網・ブランド認知・価格競争力——いずれも中小メーカーを圧倒するリソースが投入される。コンビニやスーパーの棚に並ぶノンアルコールビールは、今後さらに低価格化・大衆化が進む可能性がある。
「中間」が消えていく
この二極化の構造をシンプルに言い換えると、「大手がボリュームゾーンを押さえ、小規模ブランドがプレミアム帯で勝負する」という棲み分けが進んでいる。
アルコール市場でも同様のことが起きた。
クラフトビールの台頭がそうだ。量で大手に勝てない小規模醸造所が、個性・素材・ストーリーで差別化しプレミアム価格を正当化した。ノンアルコール市場でも、この構図が繰り返されつつある。
IWSRのデータでは、ノンアルコールワインの分野でも「バリューブランドの拡大」と「プレミアム以上の新規参入」が同時に進行していることが確認されている。中間価格帯のブランドにとっては、差別化の根拠を明確にしなければ埋もれるリスクが高まっている。
飲食店にとって何を意味するか
この二極化は、飲食店のメニュー設計にも直接関わる。
大手の低価格帯製品を並べるだけでは、「スーパーで買えるものがある」という印象を与えかねない。一方でプレミアム帯の製品を導入する場合、その価値を説明できるスタッフと、それを活かすメニュー設計が必要になる。
「なぜこのノンアルコールを選んだのか」「何が違うのか」——この問いに答えられる店が、二極化する市場の中でノンアルコールを武器にできる。素材・製法・ペアリングの文脈で語れるかどうかが、プレミアム製品の価値を引き出す鍵になる。
参考資料



