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日本人はなぜ酒に弱いのか──答えは酒とは無関係だった
一杯目のビールで顔が赤くなる。二杯目で動悸がしてくる。翌朝は頭が痛い。 日本ではめずらしくもない光景です。飲める人と飲めない人がいて、飲めない人は「体質だから」と説明し、周囲もそれで納得する。あまりに日常的なので、疑問を持つ機会すらありません。 数字で見ると、その規模がわかります。日本人のおよそ四割が、アセトアルデヒドの分解能力が低い低活性型にあたります。まったく分解できない不活性型も数パーセント存在する。報告によって幅はありますが、日本人の半数近くが、程度の差こそあれ酒に弱い体質を持っていることになります。 ところが世界を見渡すと、これは相当に奇妙な現象です。 欧米では、一杯飲んだくらいで顔が真っ赤になる人はほとんどいません。あまりに珍しいので、英語の医学文献にはわざわざ "Oriental flushing reaction"――東洋人の紅潮反応――という名前がついているほどです。地域名を冠した用語がある。それだけで、この体質の偏りが際立っていることがわかります。 しかも、その分布には濃淡があります。変異型の頻度は中国南部で最も高く、周辺地域

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5 時間前読了時間: 5分


ノンアルコールビールの黎明期——120年前の特許がたどる、ニアビールへの道のり
禁酒法時代のアメリカに、奇妙な飲み物があった。「ニードルビア(注射器のビール)」と呼ばれたそれは、アルコールを抜いたビールに、別添のアルコールを注射器で注ぎ戻して飲むという、本末転倒なシロモノだった。 笑い話のようだが、この逸話は一つの事実を物語っている。 アルコールを抜いたビール——ノンアルコールビールは、決して最近の発明ではない。その技術は、100年以上前の特許とそして特許をもとにしたニアビールまでさかのぼる。 確認できる、最初期の特許 ノンアルコールビールの技術史をたどると、19世紀末の特許に行き着く。 1898年、イギリスで「非酔性飲料の製法の改良」と題された特許が登録された。出願したのはウィリアム・フィリップス・トンプソン、出願主体は"Non-Intoxicant Beverage Co."。 その製法はこうだ。通常通りにビールを発酵させた後、液体を煮沸してアルコールと炭酸を飛ばす。そこへ、部分発酵麦汁(クロイゼン)を15%加えて、ラガービールの味・見た目・泡を復元する。 注目すべきは、これが「ビールを作ってから、アルコールを抜く」とい

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6月30日読了時間: 4分


スーパーテイスターは何が"スーパー"なのか——味覚の個人差をめぐる科学
同じ料理を囲んでいても、味の感じ方は人によって驚くほど違う。 ある人が「ちょうどいい」と言う一皿を、別の人は「苦すぎる」と顔をしかめる。コーヒーのブラックを好む人もいれば、どうしても受けつけない人もいる。 この違いは、好みやわがままの問題ではない。 味を人一倍強く感じる人々——「スーパーテイスター」と呼ばれる人たちが、実際に存在する。 では、彼らの何が"スーパー"なのか。その正体を探ると、味覚という感覚が、いかに人それぞれかが見えてくる。 味の濃さが、人によって違う スーパーテイスターという言葉は、1990年代初頭に心理学者リンダ・バートシャックが提唱した。彼女は、実験参加者の中に、ある苦味物質に対して、他の人をはるかに上回る強烈な反応を示す一群がいることを見いだした。 味覚研究では、PROP(プロピルチオウラシル)という苦味物質を使って、味の感受性を測る。 この物質を塗った試験紙を舌に乗せたとき、人の反応は三つに分かれる。 ほとんど無味に感じる「ノンテイスター」 ほどよく苦いと感じる「ミディアムテイスター」 そして耐えがたいほど強烈に苦いと感じ

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6月19日読了時間: 5分


お酒の代わりに"リラックス"を売る飲み物——機能性ドリンクの最前線
人がお酒を飲む理由のひとつに、「リラックスしたい」がある。 一日の終わりに一杯、緊張をほぐすため、気持ちを切り替えるため——アルコールは長らく「ほぐれるための飲み物」として機能してきた。 では、その「ほぐれる」という体験を、アルコールなしで提供できるとしたら。いま世界で伸びているのが、まさにその発想の飲み物だ。「酔う」のではなく「ほぐれる」ことを売る、機能性リラクゼーション飲料が市場を広げている。 「酔う」の代わりに「ほぐれる」を ノンアルコール飲料はこれまで、「アルコールの味を再現すること」に力を注いできた。 ノンアルコールビール、ノンアルコールワイン——いずれも「お酒の味」をいかに損なわずにアルコールだけを抜くか、という勝負だった。 機能性リラクゼーション飲料の発想は、これとは違う。 「味」ではなく「機能」を再現しようとする。アルコールが担ってきた「リラックスさせる」「気分を切り替える」という働きそのものを、別の成分で提供しようというアプローチだ。 この発想が生まれた背景には、飲酒動機の変化がある。 「酔うため」ではなく「ストレスをほぐすため

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6月11日読了時間: 4分


発酵と熟成はどう違うのか——飲料の複雑さを生む2つのプロセス
ワインやビール、日本酒を口にしたとき、フルーティさ、酸味、渋み、余韻——さまざまな要素が層をなしている。 この複雑さはどこから来るのか。答えは主に2つのプロセスに行き着く。発酵と熟成だ。 どちらも「時間をかけて風味を作る」という点では似ているが、働くメカニズムはまったく異なる。この違いを理解することは、飲料の設計を考える上で——そしてノンアルコール飲料の可能性を考える上で——重要な手がかりになる。 発酵とは何か 発酵とは、微生物が有機物を分解・変換するプロセスだ。飲料においては主に酵母や乳酸菌が糖を分解し、さまざまな化合物を生成する。 最もよく知られるのはアルコール発酵だ。 酵母(主にSaccharomyces cerevisiae)が糖をエタノールと二酸化炭素に変換する。しかしこの過程で生まれるのはアルコールだけではない。エステル・アルデヒド・有機酸・フーゼルアルコール(高級アルコール)など、数百種類の香気成分が同時に生成される。 エステルはその代表格だ。 アルコールと有機酸が酵母の酵素によって結合することで生まれ、フルーティで花のような香りを

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5月20日読了時間: 4分


「0.00%」に意味はあるか——日常の食卓から考える、アルコールの境界線
ノンアルコール飲料を選ぶとき、「0.00%」と「0.5%未満」という2つの表示が並んでいることがある。多くの消費者は前者を選ぶ。アルコールをゼロにしたい、という意識が働くからだ。 しかしその判断は、ひとつの前提の上に成り立っている。 「自分の食卓にはアルコールがない」という前提だ。 アルコールはすでに食卓に 普段の食事を少し振り返ってみると、話が変わってくる。 醤油はKikkoman公式FAQによれば、2%以上のアルコールを含む。大豆と小麦を発酵させる製造工程で、酵母が糖をアルコールに変換する——ビールや日本酒と同じ原理だ。この数字は、0.5%未満のノンアルコールビールの4倍以上になる。 パンも発酵食品だ。イーストが糖を分解する過程でアルコールが生じ、焼成時に大部分は揮発するが、一部は残留する。 2016年にJournal of Analytical Toxicologyに掲載されたGorgusらの研究では、ハンバーガーで使われるバンズから最大1.28%相当のエタノールが検出された。 果汁100%ジュースも例外ではない。同研究では、オレンジ・りん

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4月18日読了時間: 4分


コーディアルの500年——薬局で生まれた飲み物が、ノンアルコール時代に蘇る理由
ロンドンやパリの高級バーで、スパークリングウォーターにエルダーフラワーコーディアルを数滴垂らした一杯が、ワインと同じ価格帯で提供される光景が珍しくなくなっている。 Southern Glazer'sの2026年Liquid Insights Tourでも、コーディアルとアペリティフは「ジンやラムより多くメニューに登場する素材カテゴリー」として観察された。 ノンアルコール市場の拡大とともに、コーディアルは今、急速に注目を集めている。 しかしこの飲み物の歴史は500年以上前にさかのぼる。その歩みを辿ると、なぜ今コーディアルがノンアルコールの文脈で再評価されているのかが見えてくる。 起源——15世紀イタリアの薬局で生まれた「liquori」 コーディアルを理解するには、まずリキュールの起源から始める必要がある。 15〜16世紀のルネサンス期、イタリアの薬剤師たちはハーブ・スパイス・植物素材をアルコールに浸漬・蒸留した強力な抽出物を作っていた。イタリアではこれを「liquori(リクオーリ)」と呼び、フランスでは「Liqueurs d'Italie(イタ

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4月14日読了時間: 5分


飲酒とJカーブ、嘘とホント
みなさんはお酒の「Jカーブ」というものを聞いたことはあるだろうか? 「Jカーブ」に聞きなじみがない人でも、「少量のお酒は身体にいい」、「酒は百薬の長」という言葉は聞いたことがあるはずだ。 Jカーブは、そういった少量であればお酒は身体に良いとする論拠として使われてきた研究結果...

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2022年11月16日読了時間: 4分


The List of Wine and Food Aroma Compounds
When we smell wine aromas, what do we exactly smell and feel from the micro point of view? Looking through aromas, we refer to "Taste...

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2022年9月21日読了時間: 7分


コロナ後遺症による嗅覚異常発症後の嗅覚実験
今回は編集部よりコロナ感染者が出て、後遺症として嗅覚異常が確認された(現在は完治済み)ので、コロナ後遺症による嗅覚異常がどの程度嗅覚に影響を与えるかを実験してみた。 コロナ罹患及び嗅覚異常について コロナ発症までの経緯は下記の通り、 8月6日:喉の痛みを感じる。発熱なし...

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2022年8月30日読了時間: 4分


飲料界のフードテック
食×科学のフードテックについての書籍『フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義』が今月発売されました。 食糧危機や異常気象が騒がれる現代において、世界的に注目されるようになってきたフードテック。 しかし、そのフードテックが飲料業界でも進んでいることはあ...

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2020年7月27日読了時間: 4分


アルコール界のプラシーボ効果 空酔い
ノンアルコールを飲んでほろ酔い気分、アルコールが入っていないのはわかっていても、なんとなく酔ったような心地になる。 このような現象を「空酔い」と表現するらしいが、ほんとうにそんなことがあるのだろうか? ノンアルコールがもたらすプラシーボ効果「空酔い」について今回は見ていきた...

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2020年2月6日読了時間: 4分


割る・伸びる・薄まる
前回の『蒸留ってなんだ?』に続いて、今回のブログテーマでもある味わいが伸びるって何だろうという素朴な疑問を考えるための土台であった。 水割り、ソーダ割り、トニック割り、と様々なものでお酒を割って楽しむ文化がある。 ノンアルコールスピリッツのようなものが出てきている昨今、改め...

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2019年12月12日読了時間: 4分


蒸留ってなんだ?
水蒸気蒸留を用いるノンアルコールスピリッツやジンやウォッカ、焼酎といった蒸留酒、そもそも蒸留って何だろう?なんで必要なんだろう?という素朴な疑問について考えたい。 本格焼酎造りの場合のように、アルコール度数を上昇を目的として蒸留するのは合点がいく。しかし、ジンのように最初か...

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2019年12月9日読了時間: 3分


フレーバー抽出の方法
スピリッツでもワインでもシュラブでも、多くの飲料において抽出は大事な要素になる。 抽出の方法は味わいに大きな影響を与え、生産プロセスでも時に大きな時間を占める。 ノンアルコールにおいても、ハーブやスパイスといったボタニカルが多く使われるようになってきた昨今において、改めて抽...

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2019年10月21日読了時間: 4分


アルコールを生まない発酵
『ノンアルコールワインの製造方法』や『ノンアルコールビールの製造方法』を見てきて、発酵しているのにアルコール生成が起きないということがしばしばあった。 もちろん、乳酸発酵などアルコールを生成しない発酵が存在しているのは、知ってはいるが、同じ果汁を同じように発酵させて一方はア...

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2019年9月23日読了時間: 3分


科学的ペアリングアプローチ
以前、『ドリンクペアリングの基礎アプローチ』においてA~Eの五つのペアリングアプローチを紹介したが、科学的アプローチだけ詳述できていなかった。 今回は、具体的に香気成分に着目した場合のペアリングを見ていくこととする。 分子レベルペアリング 前回に引き続き、"Taste...

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2019年9月12日読了時間: 4分


食の香気成分一覧
嗅覚・味覚の生体メカニズム、分子・化合物の理解と順を追って紹介してきたが、今回は香気成分について見ていく。 香りを見ていくにあたり、スペインのミシュラン三つ星レストラン"El Bulli"に認められ、ロバート・パーカーからも生粋の天才と認められたアロマ研究科Francois...

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2019年9月9日読了時間: 11分


分子と化合物の初歩
香気成分、呈味成分を見ていくために、前回までで『味覚のメカニズム』・『嗅覚のメカニズム』を確認した。 そこで、味覚や嗅覚を感じるということは、つまるところ受容体とそれぞれの化合物の物理的な結合がトリガーとなっていることがわかった。...

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2019年9月5日読了時間: 3分


嗅覚のメカニズム
前回の『味覚のメカニズム』に引き続き、今回は嗅覚に注目していく。 複雑な香りの世界 味覚と比べると、嗅覚はより複雑なメカニズムと言えるかもしれない。 それには、大きく二つの理由が考えられる。 香りの世界に原臭が存在しない 心理作用・個人差が非常に強い...

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2019年9月2日読了時間: 6分
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