お酒の代わりに"リラックス"を売る飲み物——機能性ドリンクの最前線
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- 3 日前
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人がお酒を飲む理由のひとつに、「リラックスしたい」がある。
一日の終わりに一杯、緊張をほぐすため、気持ちを切り替えるため——アルコールは長らく「ほぐれるための飲み物」として機能してきた。
では、その「ほぐれる」という体験を、アルコールなしで提供できるとしたら。いま世界で伸びているのが、まさにその発想の飲み物だ。「酔う」のではなく「ほぐれる」ことを売る、機能性リラクゼーション飲料が市場を広げている。

「酔う」の代わりに「ほぐれる」を
ノンアルコール飲料はこれまで、「アルコールの味を再現すること」に力を注いできた。
ノンアルコールビール、ノンアルコールワイン——いずれも「お酒の味」をいかに損なわずにアルコールだけを抜くか、という勝負だった。
機能性リラクゼーション飲料の発想は、これとは違う。
「味」ではなく「機能」を再現しようとする。アルコールが担ってきた「リラックスさせる」「気分を切り替える」という働きそのものを、別の成分で提供しようというアプローチだ。
この発想が生まれた背景には、飲酒動機の変化がある。
「酔うため」ではなく「ストレスをほぐすため」に飲んでいた人にとって、本当に必要なのはアルコールではなく「ほぐれる体験」だ。
そこに応える飲み物として、機能性成分を配合したドリンクが注目されている。
何が「リラックス」をもたらすのか
これらの飲み物に使われる代表的な成分を、簡単に整理しておく。
L-テアニン
緑茶に含まれるアミノ酸で、この分野で最も研究が進んでいる成分のひとつだ。
「眠気を伴わないリラックス」をもたらすのが特徴で、リラックスしているときに出る脳波(α波)を増やすことが複数の臨床試験で確認されている。
Neurology and Therapy誌に掲載された研究では、200mgを摂取した約3時間後にα波が増加し、ストレスがかかる状況下で唾液中のストレス指標や不安感が低下したと報告されている。緑茶を飲むとほっとする感覚には、こうした裏付けがある。
ただし、28日間の長期摂取を調べた別の研究では、ストレス指標に明確な差が出なかったという結果もある。
急な緊張をほぐす即効的な働きと、長期的な効果は分けて考える必要がある。
アシュワガンダ
インドの伝統医学アーユルヴェーダで古くから使われてきたハーブだ。
ストレスがかかったとき、体がそれに適応する力を助けるとされ、リラクゼーション系の飲み物に広く使われている。
こうした「ストレスへの適応を助ける」とされる植物成分は、近年「アダプトゲン」と総称され注目を集めている。
ライオンズメーン(ヤマブシタケ)・マグネシウム
ライオンズメーンはキノコの一種で、認知機能のサポートと関連づけて使われる。
マグネシウムは神経の興奮を鎮める働きで知られるミネラルで、「落ち着き」を求める配合に加えられることが多い。
これらは単独で使われるより、複数を組み合わせて「リラックス」という体験を設計するのが一般的だ。
市場で伸びるブランド
こうした成分を武器にしたブランドが、欧米で急速に存在感を増している。
英国のTripは、マグネシウム・ライオンズメーン・アシュワガンダ・L-テアニンを配合した飲料で、2025年に売上1億ドルに到達。2026年にはその倍増を見込んでいる。米国では15,000店以上、グローバルでは50,000店以上で販売されている。
同じく英国のImpossibrewは、L-テアニン・アシュワガンダ・チアミン・ノートロピックスを配合した「リラックスするためのノンアルコールビール」を展開。2025年のクラウドファンディングでは目標額の315%にあたる150万ドル以上の資金を1,200人以上の投資家から集めた。
このほか、De Soi(リーシ・L-テアニン配合)、Kin Euphorics(アシュワガンダ・リーシ・サフラン配合)、Hiyo(アダプトゲン・ノートロピックス・ボタニカル配合)など、「ほぐれる」を売りにするブランドが次々と登場している。
市場調査会社の予測でも、L-テアニン・アシュワガンダといった成分は2026年の飲料トレンドの中核として挙げられている。
日本への示唆
この潮流は、日本にとって示唆に富む。
第一に、「酔うための飲み物」から「気分を整える飲み物」へという発想の転換だ。
ノンアルコール飲料を「お酒の代替品」としてだけでなく、「リラックスのための選択肢」として設計する余地がある。
仕事終わりの一杯、寝る前のひととき——アルコールが担ってきた「気分の切り替え」を、別の形で提供する飲み物への需要は日本にもある。
第二に、L-テアニンの宝庫である緑茶という、日本ならではの文脈だ。
L-テアニンはもともと緑茶に含まれる成分であり、日本人にとって「お茶を飲んでほっとする」という体験は馴染み深い。
海外で「新しい機能性成分」として注目されているものが、日本では古くから日常の中にあった。この親和性は、日本発の機能性飲料を考える上での強みになりうる。
「酔う」ではなく「ほぐれる」。その一杯に何を求めるのかという問いは、ノンアルコール飲料の可能性を考えるとき、避けて通れないテーマになりつつある。
参考資料



