2020年2月14日は、ワイン流通勉強会 "Wine in Motion" にてノンアルコールセミナーをさせていただきました。
今回は、その中で出てきた質問・意見をもとに振り返っていきます。
ノンアルコールとジュースの違い
ノンアルコールは結局ジュースと何が異なるのか?
法的には、おおまかに言うと、アルコール度数が1%未満の飲料で、希釈などせずに消費されるものは清涼飲料水のカテゴリーに分類される。一般的には、ノンアルコールもジュースもこのカテゴリーに属することになる。
アルコールが1%未満であれ若干含まれているもの、あるいは脱アルコールという工程を経ているものはノンアルコールという認識で理解しやすい。
ではお酒のテイストをイメージしながらも製造工程でも実際の成果物にも全くアルコールを介在しない、そういった飲料はノンアルコールなのか?ジュースなのか?
根本的ではあるが、重要な問いである。
これには、いくつかの答え方が可能である。
お酒の味わいや香りをモチーフに作ったものであればノンアルコール
お酒が飲まれる/求められるシーンを想定して作ったものであればノンアルコール
一見すると同じ答えにも思えるが、前者はプロダクトアウトの考え方、後者はマーケットインの考え方であり中核にお酒を据えていることは変わらないが、少し変わってくる。
前者は、お酒の味わいや香りに近づけようとしてコンテンツベースの発想をしているのに対して、後者は、飲み手の効用(満足感)をお酒に近づけようとする顧客ベースの考え方。
飲食の現場レベルで考えても、今後お酒を飲まなくなる人が増えてくる状況下で、客単価や顧客満足を下げることなく、ドリンクを提供していくにはジュースやソフトドリンクというジャンル設定では難しいだろう。
新しいノンアルコールの飲むシチュエーション
特に昨今の新しいノンアルコールは、価格もお酒に勝るとも劣らないものが多いが、どういうシーンで飲むことを想定しているのか?
既存のノンアルコールは、前回の『アルコール vs ノンアルコール 実際の価格差はいかに?』でノンアルコールビールについて見たように、比較的低価格で提供されることが多い。
当面新しいノンアルコールは、中高価格帯のレストランやデパート・専門店での提供・販売となりそうだ。
ビンジ飲酒について
『海外のアルコール市場動向』でも見てきたが、世界的なビンジ飲酒の低下は、WHOのglobal status report on alcohol and healthで言及されており、
最も減少率の大きいのは欧州地域の10%程度、次いでアメリカの7%程度、世界全体でも5%程度の減少となっている。
ある研究ではビンジ飲酒は低所得者層に多いとされており、世界的な所得格差是正と教育の普及で今後この数字はさらに小さくなるものと推測できる。
脱アルコール手法と影響
脱アルコールの手法は、逆浸透膜法、浸透気化法、スピニングコーンカラム、低温蒸留法/溶媒抽出法に大きく分けられる。
それぞれの方法を比較する際には、ノンアルコールワインへの影響・生成時間・投資などを考慮に入れることができる。
『ワインの科学(原題: Wine Science)』の著者ジェイミーグッド氏によると、ノンアルコールワインへの影響という観点からのみ見たとき、低温蒸留法/溶媒抽出法は最もまずい手法であり、逆浸透膜法や浸透気化法の方がより良い手法であり、最も好ましいのはスピニングコーンカラムであるという。
しかし、ジェイミーグッド氏は「いかなる脱アルコールの方法を用いても、ワインはすべからくがっかりしたものになってしまう」とも述べている。
二転三転するCBD飲料の背景
CBD飲料ほど、ジェットコースターばりの動きを見せている産業もあまり例がない。
大手酒類メーカーも続々参入し、強気な投資を進め、数年後には数千億円市場と噂されたかと思えば、アメリカではFDA(アメリカ食品医薬品局)主導のもと、飲料への利用が禁止された。
なぜ、このような手のひら返しのような事態が起きているのであろうか?
アメリカにおける、そもそものCBDの合法化の流れは、2018年に施行された農業改善法( Agriculture Improvement Act of 2018 / the Farm Bill )で、大麻由来のTHC含有率が0.3%未満のCBDが合法化されたことに端を発する(製法・製造業者が連邦規制に則っていないと非合法となる)。
*マリファナからもCBDは抽出できるが、こちらは依然として非合法のままである。
一方で、FDA(アメリカ食品医薬品局)はCBDを薬用材料として捉えており、CBDの食品などへの活用・販売は、FDAの承認なしには認められないという立場をとっている。
このような二重構造の中、Farm Billによる合法化が先行して、現在のアメリカでのCBDオイルやCBD食品などの商品氾濫を招いた。しかし、鎮痛効果・ガン転移抑制効果・抗不安効果など市場の製品が喧伝する効果効能の実際のところはまだ実証されていない。
そのような背景のうえに、さらにアメリカでは州法と連邦法の関係も存在する。
こうしてCBDを取り巻く環境は混沌としたものになっていると言わざるを得ない。
近々、日本でもCBDについての議論は本格的にスタートするであろう。
太平洋の向こう側の動向を今後も確認していきたい。
参考サイト
"Lifetime income patterns and alcohol consumption: Investigating the association between long- and short-term income trajectories and drinking" NCBI
"The no-low science bit" DRINK INTERNATIONAL
"Is CBD legal?" C/NET
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