訪日客1位の韓国で、"飲み方"が変わっている——ノンアルビールが韓国の食堂に広がった転機は2024年
2025年、日本を訪れた韓国人は946万人。国・地域別で最も多く、訪日客のおよそ4.5人に1人が韓国からの旅行者だった。
日本の飲食店には、「韓国からのお客さんはよく飲む」というイメージがあるかもしれない。焼酎で乾杯を重ねる会食、夜遅くまで続く2次会。韓国の飲酒文化は、日本でもよく知られている。
しかし、韓国国内ではいま、若い世代を中心に飲み方の変化を示すデータが出てきている。
ノンアルコールビールが飲食店に広がる転機となった制度の変化も、ごく最近のことだ。
本記事では、韓国の公的統計と制度の変化を読み解き、日本の飲食店が訪日韓国人に向けて何を準備できるかを考える。

日本を訪れる韓国人は、若いリピーター
まず、日本を訪れている韓国人がどんな人たちなのかを見ておきたい。
観光庁の2025年の調査によると、訪日韓国人(15歳以上)のうち、20代以下が37.3%、30代が32.8%。合わせて7割が30代以下だ。また、83.7%が日本を2回以上訪れているリピーターで、平均の滞在日数は4.0泊と、訪日客全体の平均(9.5泊)より短い。
若く、日本に慣れていて、短い旅を何度も繰り返す。これが、いまの訪日韓国人の中心像である。
そしてこの「20代・30代」は、韓国国内で飲み方の変化が見られる世代でもある。日本の飲食店にとっても、無視できない動きだ。
韓国の若い世代で、飲み方が変わり始めている
韓国疾病管理庁は毎年、国民健康栄養調査で飲酒の実態を調べている。その指標の一つが「月間暴飲率」だ。過去1年間に、月1回以上、1回の席で男性は7杯以上、女性は5杯以上飲んだ人の割合を指す。
2026年9月に公表された2025年の調査結果では、若い世代でこの割合が前年から大きく下がった。
20代男性:45.8% → 37.8%(8.0ポイント減)
20代女性:39.0% → 32.8%(6.2ポイント減)
30代男性:49.6% → 49.4%(0.2ポイント減)
30代女性:35.9% → 28.6%(7.3ポイント減)
※2024年→2025年。韓国疾病管理庁「2025年国民健康栄養調査」(暫定値)
1年の変化だけで長期的な流れを断定することはできない。それでも、若い世代でこれだけ大きく動いたことは注目に値する。
年末の忘年会への意識にも、世代の差が表れている。韓国の人材サービス会社インクルートが2025年11〜12月に会社員888人に行った調査では、「年末の会食は必要だ」と答えた人は、50代以上で68.9%、40代で66.5%だった。これに対し、30代では51.0%、20代では47.5%にとどまった。
20代がもっとも多く選んだのは、時間帯では「勤務時間内」(36.0%)、形式では「食事のみ」(38.8%)だった。
ノンアルコールビールが飲食店に広がった転機は、2024年
韓国の変化をもう一つ象徴するのが、ノンアルコールビールの流通をめぐる制度の変化だ。
韓国では、アルコール分1%未満の飲み物は酒類ではなく飲料に分類される。そして酒類の卸売業者は、長らくアルコール分1%以上の酒類しか扱うことができなかった。飲食店にビールを届ける酒類の卸売業者が、ノンアルコールビールを一緒に届けることができなかったのだ。
これが変わったのは2024年5月28日。酒類の免許に関する法律の施行令が改正され、酒類の卸売業者が、酒類メーカーなどがつくるノンアルコール飲料を、ビールなどと一緒に飲食店へ届けられるようになった。
その後の展開は速かった。人気ブランドCassを展開するOBビールは改正から約5か月で、ノンアルコールビールの供給先を全国約2万7000店に広げたと報じられている。
ノンアルコールビールの需要は以前から存在していた。2024年の制度改正によって、それを飲食店でも選べる環境が急速に整い始めたのだ。
市場も拡大している。調査会社ユーロモニターの推計として報じられた数字では、韓国のノンアルコールビール市場は2021年の415億ウォンから2023年の644億ウォンへ拡大した。また、韓国食品医薬品安全処の資料によると、ノンアルコール飲料全体(無アルコール・非アルコール)の国内生産量は、2023年の2万7925トンから2025年の5万3425トンへと、2年で約1.9倍になっている。
“0.0"と"0.00"、韓国でも同じ議論がある
日本でノンアルコールを扱う店にとって、もう一つ知っておきたいことがある。韓国にも、日本とよく似た線引きがあるのだ。
韓国では、アルコールを含まないものを「무알코올(無アルコール)」、アルコール分1%未満のものを「비알코올(非アルコール)」と表示し分けている。商品のパッケージでは、慣行として前者に"0.00"、後者に"0.0"と書かれることが多い。ただし、"0.0"と"0.00"という数字そのものに、法律上の区分の基準があるわけではない。
メーカーも、この違いを商品の展開に反映させている。韓国最大手のOBビールは、アルコール分0.05%未満の非アルコール飲料"Cass 0.0"と、0.00%の無アルコール飲料"Cass All Zero"を、別々の商品として展開している。
一方で、表示のわかりにくさも課題になっている。2026年10月には、韓国の国会議員による問題提起をきっかけに、この問題が報じられた。
報道によると、韓国食品医薬品安全処が2023年に行った検査では、"0.0"などを商品名に使った製品からアルコールが検出された例があった(いずれも1%未満で、基準には適合していた)。妊娠中の人などが、アルコールを含まないと誤解しかねないという指摘も出ている。
日本でも、アルコール分0.00%の商品と、1%未満のアルコールを含む「微アルコール」の商品が並ぶ。アルコールをまったく口にしたくない人にとっては、この違いを重視する人もいる。韓国からの客にとっても、それは同じである。
日本の飲食店に何ができるか
ここまで見てきたのは、韓国国内の変化だ。
日本を訪れる韓国人の飲酒行動を直接調べた統計はない。ただ、訪日韓国人の中心が、まさに飲み方の変化が見られる世代であることを考えると、日本の店にとっても準備しておく価値のある変化だと言える。
ノンアルコールを見える化する|メニューの片隅にソフトドリンクを並べるだけでなく、ノンアルコールビールやノンアルコールのカクテルを、お酒と同じ並びで紹介する。飲まない人、控えたい人が「選べる」と感じられることが出発点になる。
表記はわかりやすく|アルコール分0.00%なのか、1%未満を含むのか。韓国語や英語でもその違いがわかるように表示する。韓国にも同じ線引きがあるからこそ、伝わりやすい情報だ。
「よく飲む客」という前提を置き直す|韓国人客が多い店ほど、飲み放題やお酒中心のプランだけでなく、食事を中心にしたプランや、ノンアルコールを含むドリンクの選択肢も用意しておきたい。
「飲む・飲まない」から「どう選ぶか」へ
韓国の若い世代は、お酒をやめたわけではない。ただ、無理に飲むことから、その場に合わせて選ぶことへと、変化の兆しが見えている。そしてその選択肢の一つとして、ノンアルコールが飲食店に並び始めた。
年間946万人。日本にとって最大の訪日市場で、飲み方の選び方が変わり始めている。その変化に、日本の店のドリンクメニューは追いついているだろうか。
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