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貿易統計が語る、輸入ノンアルコールビール

1 日前
読了時間: 6分

日本のノンアルコールビール売り場を眺めると、並んでいるのはほとんどが国産である。アサヒ、キリン、サントリー、サッポロ。大手4社の製品が棚の大半を占めている。


だが、その脇に少しずつ増えている輸入品がある。こうした輸入ノンアルコールビールは、実際どれくらい入ってきているのか。


財務省の貿易統計には、この問いに答えるデータがある。HS2202.91「ノンアルコールビール」という独立した品目コードが存在し、輸入の数量と金額が毎年公表されているのだ。このコードが独立した品目として現れるのは2017年。したがって今回たどる9年間は、この統計で連続して追える全期間でもある。


ただし、この数字を読むにはいくつかの前提がある。関税定率法上、「アルコールを含有しない飲料」はアルコール分0.5%以下と定義されており、国内の市場推計でよく使われる「0.00%」という線引きとは異なる。


また、輸入金額はCIF価格、つまり商品代に運賃と保険料を加えた通関時点の価格であって、店頭価格ではない。当然、国内生産は含まれない。


そうした制約を踏まえたうえで、9年分をたどってみる。

貿易統計が語る、輸入ノンアルコールビール
輸入ノンアルコールビールの規模感

輸入品は、日本のノンアルコールビール市場全体から見れば、ごく一部にすぎない。


サントリーの推計によれば、2024年のノンアルコールビールテイスト飲料の国内市場は3545万ケース。1ケース=350ml×24本という同社の換算に従えば、約29万8000キロリットルとなる。対する同年の輸入は1338万6167リットル。単純に比較すると、輸入通関量は国内市場推計の約4.5%に相当する。


定義も計上時点も異なるため、これを厳密な市場シェアと呼ぶことはできない。それでも、輸入品が市場の一部にとどまることは分かる。

国内市場(kL)

輸入(kL)

輸入比率

2017

235,452

3,724

1.58%

2018

241,668

3,324

1.38%

2019

244,860

3,786

1.55%

2020

250,656

5,343

2.13%

2021

279,132

7,733

2.77%

2022

268,800

8,968

3.34%

2023

269,304

11,774

4.37%

2024

297,780

13,386

4.50%

2025(見込)

303,660

13,237

4.36%

※国内市場はサントリー推定のノンアルコールビールテイスト飲料(1ケース=350ml×24本で換算)。2025年は同社の見込値。輸入は財務省貿易統計HS2202.91、2025年は確々報値。両者は定義・計上時点が異なるため、比率は概算である。


ただし、比率そのものは動いている。2017年の1.58%から2024年の4.50%へ、8年で3倍近くになった。国内市場が1.27倍に伸びる間に、輸入は3.6倍に増えたことになる。


2020年、伸びが一気に加速した

年次の推移を並べると、変化の起きた時期が見えてくる。


輸入ノンアルコールビールの年次推移を示す4分割グラフ。数量・金額・CIF単価・相手国数が2017〜2025年で概ね増加。

※2025年は確々報値


2017年から2018年にかけて、輸入はむしろ減少している。372万リットルから332万リットルへ、前年比89%だった。


転じたのは2019年である。前年比114%と、拡大に向かい始めた。


そして2020年、41%増。翌2021年は45%増。伸びの角度が明らかに変わっている。以降、2024年まで6年連続で二桁成長が続いた。


2020年はコロナ禍の年であり、飲食店の営業制限、家庭内飲用の増加、健康意識の高まりといった変化が起きた年でもある。


CIF単価7割の上昇

金額の伸びが数量を上回り続けた点も目を引く。


2020年は数量141%に対して金額158%。2023年は数量131%に対して金額154%。2024年も数量114%に対して金額126%。


その結果、1リットルあたりのCIF単価は2017年の98円から2024年の169円へと、7割以上上昇した。


ただし、これを「高価格帯の製品が増えた」と読むことはできない。CIF価格には商品そのものの価格に加え、運賃と保険料が含まれる。さらに為替の影響も乗る。2017年から2024年は円安が進み、国際物流費も大きく変動した期間である。単価上昇には、輸出元での価格改定、原材料や製造コストの上昇、高単価商品の構成比変化、そして為替と物流費が、すべて混ざって反映されている。


どの要因がどれだけ寄与したかは、この統計だけでは分からない。


参考までに、2024年の169円/Lを350mlに換算すると59円になる。ここに関税(適用される場合)、輸入消費税、国内物流費、卸・小売のマージンが加わって店頭価格が形成される。


入れ替わり続ける産地

国別の内訳を見ると、9年間でかなりの入れ替わりが起きている。なお税関統計の輸入相手国は、原産国を基準に集計されている。

2017

2019

2021

2023

2025

ドイツ

1,955,373

2,459,031

5,290,635

5,323,037

5,740,152

ベトナム

0

786,907

1,365,998

1,834,012

2,835,993

大韓民国

1,289,067

468,671

345,136

2,945,785

2,193,881

オランダ

297,773

0

0

346,051

928,773

中国

0

0

1,584

7,020

790,014

シンガポール

0

0

0

892,279

500,318

一貫しているのはドイツである。2017年の196万リットルから2025年の574万リットルへ。全期間を通じて首位を守り、2021年以降は500万リットル台で安定している。2025年時点で全体の43%を占める。


ドイツ以外の国は上下が激しい。


ベトナムは2019年に79万リットルで現れ、2025年には284万リットルまで伸びた。全体の21%を占める第2位である。


韓国は乱高下している。2017年に129万リットルだったものが2019年には47万リットルまで落ち込み、2023年に295万リットルへ急回復。


そして2025年は219万リットルへ再び減少した。


中国は2023年まで年間1万リットル未満だったが、2024年に15万リットル、2025年には79万リットルへと急拡大している。


シンガポールは2023年に89万リットルで登場し、2025年には50万リットルへ縮小。


そして相手国の数は、8カ国から19カ国へと増え続けている。

2025年、7年ぶりの前年割れ

2025年、輸入は前年を下回った。数量99%、金額94%、CIF単価も169円/Lから161円/Lへ低下している。前年割れは2018年以来、7年ぶりのことだ。


国別の動きを見ると、単純な構図ではない。


減ったのは、

  • ベルギー:10万8269リットル→5万2049リットル

  • リトアニア:15万5036リットル→3万5584リットル

  • シンガポール:109万7200リットル→50万318リットル

  • 韓国:286万220リットル→219万3881リットル


増えたのは、

  • ベトナム:223万5790リットル→283万5993リットル

  • 中国:15万4481リットル→79万14リットル

  • オランダ:87万6216リットル→92万8773リットル


地域でくくると、ユーロ圏もアジアも、どちらも全体としては微減している。

ユーロ圏

アジア

2017

60.8%

34.6%

2019

65.6%

34.2%

2021

76.5%

23.1%

2023

51.0%

48.4%

2025

51.6%

47.8%

※ユーロ圏はドイツ、オランダ、ベルギー、イタリア、スペイン、リトアニア、エストニア。アジアはベトナム、韓国、中国、シンガポール、台湾ほか


長期で見ると、2021年にユーロ圏が76.5%とピークを打ち、そこからアジアが比率を高めて2023年以降はほぼ拮抗している。この変化は2025年に始まったものではない。


単価の低下も、構成の変化で説明がつく部分がある。単価の高いベルギー(643円/L)やリトアニアが縮小し、単価の低いベトナム(133円/L)や中国(156円/L)が伸びれば、平均は下がる。


為替の影響もありうる。ユーロ円は年間平均で163.95円から169.00円へ3.1%上昇した(年末値同士なら11.8%)。ただしこの水準で減少のすべてを説明するのは難しい。同じ期間、ドル円は1.2%の円高だった。


結局、為替、輸送費、各社の価格改定、調達先の構成——複数の要因が重なっており、統計から原因を特定することはできない。



輸入品は依然として市場推計の4%台にすぎない。


だが、海外のトレンドは数年遅れて日本に持ち込まれるとも言われている。この動きは国内市場の何かしらの将来を予言しているのかもしれない。少なくとも、9年分の数字はそう読める余地を残している。

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