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ボーダーレス化する飲料業界

更新日:2022年9月15日






以前から九州で話題になっていたコカ・コーラ初のアルコール飲料「檸檬堂」が10月28日から満を持して、全国での販売をスタートした。


世界のソフトドリンク会社がついにアルコール飲料に進出した大きな出来事だ。


一方、ワインの世界では伝統の国フランスにおけるイギリス、アメリカ、中国といった新興地域へのワイン醸造地の拡大。世界に冠たるモエヘネシーディアジオやペルノリカール、アンハイザーブッシュのノンアルコール/ローアルコール分野への大きな投資。


このような地理・カテゴリーにおける境界を乗り越えようとする動きについて、今回は見ていきたい。


カテゴリー横断

上に挙げたような、ノンアルコール⇔アルコールの動きはこれまでも見てきたものであるので、より実験的で新しい例をいくつか紹介したい。


►ティーワイン/ペルノリカール


ワインペアリング、ティーペアリングなどは随分一般的になってきた。

ガストロノミーにワインやお茶を合わせて楽しむというのは、歴史も古く、合理的にも思える。


しかし、そのワインとお茶を掛け合わせるとなるとまた別の話だ。


ペルノリカールは、オーストラリアでTea & Wineという新しいブランドを起ち上げた。


  • 樽熟成をしていないシャルドネ×エジプト産カモミール

  • カベルネ・ソーヴィニョン×スリランカチャイ


発酵後のワインにそれぞれの茶葉を漬け込み造っており、理想的なフレーバーを作り上げるために、二年間の実験を重ねている。


オーストラリアで小売価格AU$22(約1700円)で販売されており、オーストラリア市場での結果次第で世界展開も見据えている。


►ハードコーヒー/パブストブルーリボン


次の事例は、全米TOP5の生産量を誇りながらも、大手メーカー傘下に入らずインデペンデントを貫く、気骨のあるビールメーカー、パブストブルーリボンのハードコーヒーである。


アルコール度数5%のハードコーヒーはモルト飲料を自称しているが、モルトの味わいや色合いは除いており、純粋なアルコールのみを残し、そこにコーヒー・砂糖・牛乳・バニラを加えているため、スターバックスのフラペチーノにも近い味わいとなっている。


コーヒーリキュールなどは存在したが、RTDのアルコール入りコーヒーというのは、従来の境界を越えた新しい試みかもしれない。


►カンナビス飲料の登場


ボーダーレスという観点からは若干ずれるかもしれないが、飲料業界の多角化ということを考えた場合、これ以上の好例もないだろう。


カンナビス飲料、大麻入り飲料、CBD飲料など呼び方は様々だが、確実に支持を伸ばしている。


2018年からカリフォルニア州で嗜好用大麻の使用が解禁されたことが、この産業を創出した。今後間違いなくより大きなトレンドとなっていくことだろう。


地理的横断

地理的横断は挙げていけば枚挙にいとまがない。

なので、具体的な事例を挙げていくよりも、その背景を考えていきたい。


  • 温暖化/気候変動

  • 有名地域の地価上昇

  • 新たな経済大国の台頭


などが挙げられるかと思う。


温暖化による栽培条件の変化が、ワインなどの世界では北へ北へと新天地を求めだし、地価の上昇や有名地域の過密化が同様の気候への活路を切り開き、新たな経済大国の台頭に伴い、新たな商圏を求めた動きが生じる。


新天地を求めて

カテゴリーや地理的な新天地を目指す動きの背景にあるのは、成熟市場における脱成熟の動きである。


なかでも象徴的なのが、これまでアルコール業界を牽引してきたビール市場の衰退であろう。



伝統的なドイツやアメリカにおける消費量減は言うに及ばず、ロシアや中国においてもここ数年は減少傾向にある。


アルコール業界の最大売り上げを占めるビールの衰退にともない、各国・各社ポストビールやビールの穴を埋める商品開発に乗り出しているということがうかがえる。


いずれにせよ新たなジャンルを求め、カテゴリー横断・地域横断的なこの取組みは、飲料業界のボーダーレス化を促すことは間違いない。


参照サイト

「“九州No.1”のレモンサワー「檸檬堂」全国発売、日本コカ・コーラ初のアルコール飲料」食品産業新聞社

"PERNOD RICARD LAUNCHES TEA-INFUSED WINE RANGE" the drink business

"Pabst Blue Ribbon Seeks Buzz With Hard Coffee" The Salt

"Around the world, beer consumption is falling" The Economist


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