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オルタナティブという概念について - 4P分析をふまえて -

更新日:2022年9月15日







昨今、海外のノンアルコール市場でしばしば目にするワードとして "~ Alternative" "Alternative ~"という言葉がある。


あえて "non-alcoholic"という言葉を使わないところが味噌だ。


では、Alternative / オルタナティブとは何を指しているのか?ノンアルコールと何が違うのか?今回は、4P分析に基づいて考えていきたい。


4P分析とは?

本題に入る前に、4P分析とはなにか簡単に紹介しておきたい。


4P分析とは、事業を4つの側面、つまりProduct(製品)、Promotion(プロモーション)、Price(価格)、Place(流通/立地)の4つのPから考えるマーケティング戦略を考える際のツールの一つである。


マーケティング戦略とは、基本的にこれら4つの組み合わせであると言われる。


Product/製品

Productを考えるにあたって、今回は二点見ていきたい。


  1. 製造概念:どのような概念のもと製造がなされているか?

  2. 製造手法:おおまかにどのような製法が取られているか?


1.製造概念


まずは、既存のノンアルコールから考えてみる。


これまでのノンアルコールの多くは、酒類メーカーから出されているものがほとんどである。

ゆえに、のちにも説明するが、既存のお酒からアルコールを抜く脱アルコールの手法がとられていることが多い。


これは一企業で考えられば、効率的に商品レンジの拡充を果たせるためもっともな施策のように思えるが、一方既存の商品に縛られるという点も考えられる。


そのような商材ありき、メーカーありきの発想をプロダクトアウトと呼ぶ。


他方、オルタナティブの担い手はもっぱら酒類を扱わないメーカーである。


そのため、彼らはより市場のニーズを反映させたマーケットインのものづくりを行っている。


それぞれの用語説明もふくめ、まとめると


  • プロダクトアウト:商品開発や生産において、メーカーの効率性や計画を優先させる姿勢。ノンアルコールの世界で主流の発想。

  • マーケットイン:市場や購買者という買い手の立場に立って、買い手が必要とするものを提供していこうとする姿勢。オルタナティブの世界で主流の発想。


2.製造手法


では、製造手法にどのような違いがあるか?


これは特にワインなどにおいて顕著であるが、ノンアルコールワインでは既存のワインの製法過程を少し手を加えてアルコールを抜くという場合が多い。*詳しくは『ノンアルコールの製造方法』を参照されたし。


既存のものからアルコールを抜くという引き算的な手法が、ノンアルコールの製造手法では主流であるといえる。


オルタナティブにおいては、ハーブやスパイス、フルーツなどを用いて味わい・香りを重ねて、ワインなりスピリッツなりのフレーバーに近づけていくというのが主流の方法である。


こちらは、引き算的なノンアルコールに対して、より足し算的な手法であるといえるかもしれない。


Promotion/プロモーション

プロモーションについても、二点から見ていきたい。


  1. ターゲット:メインターゲットを誰に据えているか?

  2. 訴求方法:どのように訴求しているのか?


1.ターゲット


ノンアルコールはこれまでどのようなターゲットを狙ってきたか?


ノンアルコールビール、ノンアルコールワインといった従来の商品の多くは、大手酒販メーカーに牽引されてきた。


言うまでもなく、彼らのメインターゲットは普段からアルコールを飲む層であり、彼らが飲めないときのサポートとして商品を提案してこそシナジーがあり、既存のチャネルなども有効に使うことができる。


他方、オルタナティブは小規模ベンチャー発であることがほとんどで、言うまでもなく彼らは大手酒販メーカーのような広範なチャネルなど有していない。


ゆえに、明瞭なストーリーを提示して、自社のブランドに価値を感じてくれる層をターゲットとする必要がある。


結果として、逆説的ではあるが、普段から全くお酒を飲まない層から普段から飲む層まで取り込むことになる。


弊社ブログでも度々紹介させていただいている、レオスキャピタルワークスの藤野社長が提唱するゲコノミスト・ノミストの観点から捉えなおすならば、ノンアルコールはノミスト向け、オルタナティブはゲコノミスト向けという言い方もできるかもしれない。


ノミスト・ゲコノミストについての説明は、下部参考サイトを参照いただきたい。


2.訴求方法


次は上記のターゲットに向けて、どのような訴求を行っているのかを考えてみる。


ノンアルコール産業においては、『機能を売りにするノンアルコール』で見てきたように、機能性訴求をしている場合が多い。


これは、ターゲットとしている常飲酒者にとって、ノンアルコール=ネガティブな選択肢、あるため、わかりやすく付加価値を提示する必要があるからであろうか。


一方で、オルタナティブにおいては、ストーリーを重視する場合やライフスタイルの一環として紹介されることが多い。


このような背景には、単純な機能性で巨大な資本を持っている大手企業と勝負しても勝ち目が薄いこと。後にも紹介するが、高価格に説得力を持たせるためには、それを飲むこと自体(飲んだ結果としての効能などでなく)に価値を感じてもらう必要がある。


さらに、そもそも小規模でスタートしている場合、ビジネスチャンスや利益率などといった数字化できる指標ではない、intangibleな経験・物語が背景にある場合が多い。


また、オルタナティブの訴求の一つとして欠かすことのできないものが、『Sober Curiousというムーブメント』でも紹介したライフスタイル/生き方としてのSober Curiousである。


Sober Curiousというライフスタイルの中に、それぞれの商品は見事に埋め込まれている。


Price/価格

次は価格だ。


ノンアルコールについては、『アルコール vs ノンアルコール 実際の価格差はいかに?』でも見たように、通常のアルコールよりも50%ほど安い価格帯となっている。


それも、メインターゲットを常飲酒者に据えていれば当然と言えば当然かもしれない。


では、オルタナティブはどうか?


海外で最も注目されており、投資対象となっているジャンルスピリッツオルタナティブを考えても、その価格はおおまかに£20~30と、通常のアルコールは言うに及ばず、クラフトスピリッツなどと同等の価格帯で販売されている。


弊社で扱っている商品や近年人気を得ているボトリングティーを考えても、お酒だからノンアルコールだからというカテゴライズは価格に関しては、あまり意味をなしていない。


Place/流通

最後に見るのは、流通だ。どういうところで販売されているの、ということだと思ってもらえばと思う。


ノンアルコールについては、多くの人が日々目にしているので、あまり深く言及する必要はないだろう。


スーパーや居酒屋をはじめとした、ロー・ミドルレンジで展開されている。


ではオルタナティブはどうかというと、海外でもスーパーなどでは目にすることはあまりない。


小売されている場所は、デパートや専門店。飲食店では、一般的なパブから高級バーまでと幅広い。弊社の取扱いについて考えてみても、小売りは専門店中心、飲食店は中~高価格帯とおおむね一致する。

 

以上のことをまとめると、次のような表におこすことができる。



参考サイト

『下戸が開く「ゲコノミクス」で経済効果は3000億円以上』日経ビジネス


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