平成ピーク時から25%以上縮む酒類市場
国税庁の酒レポートによると、2020年の成人一人当たりの酒類消費量は、
- 平成元年(1989年)と比較すると21.63%の落ち込み
- 消費のピークである平成4年(1992年)と比較すると26.33%の落ち込み
となっている。
これを受けて、国税庁は20~39歳までの若者を対象として酒類の需要喚起策を公募している。
2020年は対前年比で見ても-3.97%となっており、3%程度の落ち込みは1989年以来としては、1997年、2003年、2008年、2014年に続いて5年目となっている。
背景としては、『国内アルコール離れを説明する四つの要因』でも見た、経済/健康/社会/嗜好性という四つの軸に基づいて考えてみたい。
経済要因:消費税増税(8%→10%)が2019年10月から実施されている
コロナ禍における緊急事態宣言発出等による経済の停滞
健康要因:新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う健康意識上昇
社会要因:経済停滞に伴う外食での需要減少
嗜好性:ビール需要の大幅減/発泡酒・リキュール需要増
盛り上がる4000万人のノンアルコール市場
一方でノンアルコール市場は、酒類市場のコインの裏表の関係のように成長を続けている。
大手ビールメーカーのアサヒビールは電通デジタルの二社は合弁会社スマドリを今年2022年に設立し、ノンアルコールやローアルコールへの打ち出しを強化。2025年までにアサヒビールとして酒類商品ポートフォリオの20%をアルコール度数3.5%以下のノンアルコール/ローアルコールへと変えていくことを宣言した。
現在日本にお酒を飲まない層は4000万人、2021年時点で市場規模は800億円とも言われている。現時点では、酒類市場と比較しても小さな市場だが、直近の5年間で150億円伸びており、成長産業としての期待がかかる。
ノンアルコールカテゴリーの中では、やはりビール系飲料が強く、サントリーのノンアルコール飲料レポートでは75%以上がビール系飲料を志向していることがわかる。
現状のコロナ禍やウクライナ戦争、原料費高騰を考えると、酒類消費のダウントレンドは今後も続くと考えられる。一方で、ノンアルコール市場における世界的酒類メーカー主導の世界的な波は日本には本格的に届いていないことを考えると、今後さらなら盛り上がりは十二分に期待できる。
今や、酒類業界もノンアルコール業界も、アルコールやノンアルコールの枠を超えた飲料市場として大きな転換点を迎えているのかもしれない。
参考資料
・4000万人の「飲まない」人へ仕掛けるノンアル商戦。アサヒビールと電通デジタルが渋谷・センター街にバーをオープン/BUSINESS INSIDER
・「飲み方」が変わる?/NHK
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