科学的ペアリングアプローチ






以前、『ドリンクペアリングの基礎アプローチ』においてA~Eの五つのペアリングアプローチを紹介したが、科学的アプローチだけ詳述できていなかった。


今回は、具体的に香気成分に着目した場合のペアリングを見ていくこととする。


分子レベルペアリング

前回に引き続き、"Taste Buds and Molecules"から実際に香気成分に基づくペアリングの例を紹介していく。あくまで香気成分にフォーカスした実験的な取組みであることを理解されたい。


*合わせる料理が、材料を全て記載している関係でわかりづらくなっています。。


►シャトー・ド・ボーカステル ブラン2006の場合


注目する香気成分:ラクトン

         ホトリエノール

         フェニルアセトアルデヒド


同様の香気成分をもつ食材:ローストアーモンド、ドライローズ、カモミール、松葉ガニ、フェンネル、プルーンシードオイル、ジャスミン、ラベンダー、トウモロコシ、蜂蜜、パスティス、ホタテ、豚肉、熟成スイスチーズ、熟成パルミジャーノ、シトラス


合わせる料理:クヘントウ油で熱した大ホタテ貝 ~マンダリン、みりん、乾燥トウモロコシパウダー、キンモクセイのムースを添えたフェンネルの温サラダとともに~


ポイント:濃密で骨格のしっかりしたボーカステル・ブランと旨みのしっかりとしたホタテ貝を軸に、ワインに共通する香気成分をもつ食材をソースや添え物として活かしている


►ファミーユ・ペラン ヴァケラス レ・クリスタン2006の場合


注目する香気成分:ロタンドン

         βイオノン


同様の香気成分をもつ食材:肉(ウェルダン)、昆布、海苔、鰹節、人参、椎茸、松茸、ジュニパーベリー、ドライハーブ、黒胡椒、サフラン、セージ、マグロ、熟成ハム


合わせる料理:ジュニパーベリー、ブラックオリーブ、豆、焼きのり、ハム脂、で漬け込んだマグロ、グレープシードオイル、モロッコ産サフランをソース代わりに


ポイント1:海苔には、脂質にのみ溶けだすβイオノン(スミレの香りを有する)が含まれいるので、ソースにつけることでよりβイオノンのニュアンスを引き出すことができる。


ポイント2:ジュニパーベリーにはαピネンというイオダインに強く反応する香気成分が含まれている。ヴァケラスのワインや海苔には、呈味成分であるイオダインが含まれているため、ジュニパーベリーのαピネンでその要素を増幅させ、飲料と料理で共通項をより明確化させる。


►シャトー・オー・シェニョー2003、シャトー・ラ・セルギュ2006の場合


注目する香気成分:βイオノン

         フランビノン

         ハバナエクストラクト

         マルトール

         グアイアコール

メルカプトヘキサノール


同様の香気成分をもつ食材:海苔、ハバナ産タバコの葉、バルサミコ酢、燻製牛、カカオ、コーヒー、ラズベリー、スミレ油、フェンネルの花、ココナッツ、グリーンペッパー、プラム、ごま油、バドゥーヴァン、焦がし砂糖


合わせる料理(オー・シェニョー2003):スミレ油とごま油で炒めた赤胡椒でコーティングしたラズベリーゼリー~リコリスとハバナタバコの葉で燻しコニャックに漬け込んだ海塩をそえた昆布とともに~


合わせる料理(ラ・セルギュ2006):カエデで燻した冷製ビーフ、ココナッツとチコリーバターのポルチーニ茸、クロスグリ・ナツメグを砕いて和えた赤キャベツ


ポイント1:カベルネ・ソーヴィニョンやメルローなどのボルドー系品種が持つβイオノンを軸に、同じくβイオノンを含む海苔やラズベリー、スミレを合わせる


ポイント2:樽熟成のワインに現れるマルトールやグアイアコールの持つ、焦がした砂糖や燻香のニュアンスで飲料と料理に橋をかける


►シャトー・ド・ボーカステル2005の場合


注目する香気成分:オイゲノール

         ジメチルピラジン

         

同様の香気成分をもつ食材:クローブ、ココア、バジル、レッドビーツ、コーヒー、セイロンティー、シナモン、ジビエ、ローストしたごま油、ブラックベリーリキュール、ヘーゼルナッツ、大麦、黒胡椒、ジャガイモ、リコリス、スコッチ、アスパラガス、アモンティリアード、オロロソ


合わせる料理:種ごと入ったブラックベリージュース、リコリスとクローブのピュレ、カカオニブをそえたナラタケ、タイバジルで調理したカリブー


ポイント:グルナッシュ、シラー、ムールヴェドルブレンドのワインは、ブラックベリーやリコリスのソースのジビエと合わせることで余韻が長くなり、タンニンが和らぐ



香気成分をベースとした科学的ペアリングアプローチは、飲料や料理のアロマの基になる成分を知ることで、構造的ペアリングアプローチにおけるSHAREやCOMPLEMENTINGを意識的に引き起こすことができるというものだ。


もちろん、香気成分や呈味成分の研究がさらに進めば、共通項の見つけ出し以外にも、共通していなくとも互いに相性の良い成分の関係性などを見出すことはできるかもしれない。


参考文献

"TASTE BUDS AND MOLECULES" Francois Chartier

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