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分子と化合物の初歩






香気成分、呈味成分を見ていくために、前回までで『味覚のメカニズム』・『嗅覚のメカニズム』を確認した。


そこで、味覚や嗅覚を感じるということは、つまるところ受容体とそれぞれの化合物の物理的な結合がトリガーとなっていることがわかった。


今回は、そもそも分子って?、化合物って?というところから、呈味成分、香気成分において重要とされる有機化合物について見ていく。



原子・分子・化合物、基本のキ

とりあえず、一番根本的なところから始めていく。


物質の最小単位は原子である。


原子は以下のように構成されている。


  • 原子=原子核(中性子+陽子)+電子

*陽子、電子の数は電子番号の数に等しく、中性子の数は原子の質量数から陽子の数を引いた値に等しい


その原子を種類分けする際は元素という言葉が使われ、これが「スイヘイリベー…」と暗記したあれである。


現在自然界におよそ90種類が存在し、人工的に作られたものも含めると120種類ほどある。


大まかに言うと、これら元素のうち


  • 複数個の元素が結合してできた物質→分子

  • 複数種類の元素からなる物質→化合物


となる。


分子とは水素(H2)のような、一種類の元素が複数個結合してできたものであるのに対し、H2Oのような、複数種類の元素が結合してできたものが化合物である。


留意点としては、分子は原子が結合していることが必要条件となる点である。



原子同士の結合には、原子の構成要因である電子に注目する。


電子は、原子核の周りを止まることなく動いている。

しかし、どこにでも自由自在に動けるわけではなく、動ける範囲は限定されている。


動ける範囲のことを電子殻とよび、内側からK殻、L殻、M殻…という風に層状に名付けられている。それぞれの電子殻には入れる電子の数も決まっており、


入れる電子の最大数は、 2n²個 (K殻:n=1, L殻:n=2…)


結合の際に、重要になってくるのは、この電子殻の最も外側の電子数である。

なぜなら最外殻の電子数が、多くの場合において他の原子とつながるための手の役割を果たすからである。


 

例えば、原子番号16番の硫黄(S)について考えてみる。

原子番号が16番であるから、硫黄は同数である16個の電子を持っている。


K殻には最大数である2個の電子が入り、L殻にも同様に最大数8個の電子が入る。


この場合、残り6個の電子はM殻に入ることになる。M殻の最大数は18個であるから、この6個すべてを受け入れることができる。


つまり、硫黄の場合において最外殻の電子数は6個となり、6つの手を持つこととなる。

 

このように原子同士が、手をつなぎあい新たな形をなして分子や化合物となり、香りや味わいなどの様々な特性を持つようになるのである。


有機化合物について

特に、香気成分や呈味成分でよく目にするのが有機化合物というワードである。


そもそも、化合物には有機と無機が存在する。


おおまかに言うと、炭素(C)を含む化合物を有機化合物(一酸化炭素、二酸化炭素など一部例外あり)といい、それ以外を無機化合物という。


有機化合物には、いくつかの分類法が存在するが、今回は官能基と分子構造による分類でまとめた。



官能基とは、分子構造の中でも頻出する個性的なかたまりのことを言う。それぞれの名前の後ろの括弧書きが、そのかたまりを表している。一つの化合物が複数の官能基をもっていることもある。


分子構造による分類では、大雑把になるが環状構造を中心とする芳香族化合物と鎖状構造を中心とする脂肪酸化合物という分類となる。


別途、テルペノイドについては香気成分についての文献等でよく目にするので、記載しておいた。


▶関連記事を読む

『味覚のメカニズム』 https://bit.ly/32atrUr

『嗅覚のメカニズム』 https://bit.ly/2PzyP1W


参考文献

『化学 -改訂版-』数研出版

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