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もっとよく見る、若者のお酒離れ

更新日:2022年9月15日






以前、『データでたどる国内アルコール離れの実態』や『国内アルコール離れを説明する四つの要因』などでも取り上げた若者のアルコール離れの実態。


今回は『もっとよく見る』ということで、若者の飲酒について、より深く考察していく。


本当に「若者」は離れているの?

まずは、改めて消費実態を見ていく。


国税庁が定める「飲酒習慣がある」つまり、週に三回以上飲酒する割合は、20代男性で14.5%、20代女性で6.5%。これは、全体平均の42.4%(男性)、15.0%(女性)のそれぞれ3分の1程度である。


しかし、これは以前にも見たデータである。

今回は、昔の「若者」と今の「若者」を比較して、若者の酒類消費量の変遷を見ていく。


家計調査(総務省)より作成

上図は、総務省のデータをもとにした年齢別酒類支出額(一カ月あたり)である。2005年から2018年のデータを取ってある。


金額ベースで見ていくと、意外にも40,50代が今と昔で酒類離れが起きていることがわかるが、割合で見ていくと20代は35%近く落ち込んでおり、50代の15%、40代の16%と比較しても群を抜いている。


また、日本政策投資銀行作成の下図資料によると(少し古いデータではあるが)、家飲みに限ってみると20代の飲酒離れはより顕著であることがうかがえる。



家飲みという、より自身の嗜好に正直でいれるシーンでも20代の落ち込みようははっきり表れている。


離れていく背景

では、若者にかぎった場合のアルコール離れの背景は何だろうか?


以前『国内アルコール離れを説明する四つの要因』では1997年・2003年・2008年の三つの年で消費量が大きく落ち込んでいることを確認して、以下四つの要因を挙げた、


  • 経済事情

  • 飲酒をめぐる社会認識

  • お酒にまつわる文化的背景

  • 嗜好性の変化


今回は上図の酒類支出をもとに、2005年→2010年が6%程度の減であるのに対して、2010年→2015年→2018年がそれぞれ17%近い減少であることから、2010年以降の減少要因について、上記の経済・社会・文化・嗜好性の枠組みの中でより詳しく見ていく。


若い人がお酒から離れたくなる要因として以下を検討する。


  • 経済状況の悪化

  • SNSを通じたお酒のネガティブキャンペーン

  • 健康意識の変化

  • 嗜好性の変化


►経済状況の悪化


まずは、単純にお金がないからお酒を飲まなくなったのではないか?という可能性を探っていく。



上図は、大和総計による2011年以降の男女別年齢別の平均年収推移であるが、2011年から2012年、2013年はわずかに下がっているものの上昇傾向にあると言える。


つまり、2010年以降の酒類支出の減少は、単純な可処分所得の減少などでは片づけられないように思う。


►SNSを通じたお酒のネガティブキャンペーン


次に見ていく可能性は、SNSなどを通じたお酒のネガティブキャンペーンの存在である。


TwitterやiPhoneの登場が2008年と2010年代はSNS隆盛期といえるだろう。


その中で、これまでならうちうちに処理されていた未成年飲酒や飲酒を通じた失態が日本中で拡散・共有される時代になった。



拡散され共有されたお酒に対する負のイメージが、若者をお酒から遠ざけたという可能性は高いように思う。


►健康意識の変化


下記は、日本政策金融公庫が発表している年代別の食の志向である。



特に20代に限ってみれば、健康志向は三番目であり、その前に「経済性志向」「簡便性志向」が来ていることからも、実際に健康を意識しながら食事をしている人はそう多くはないと思われる。


一方で、電通の調査によると、グルテンフリーやマクロビオティックなどの話題の健康食の実施率は20代において高く、ボルタリングやキックボクシングなど進化系スポーツと言われるジャンルの実施率においてもこの傾向は見られた。


つまり、若者の健康観としてはただ健康を目的とした行動については消極的だが、体験型の健康エンタメについては積極的に実施する傾向にあると推測できる。


この視座からアルコール離れを考えると、純粋に肝機能などを心配してお酒を控えている人は少なく、あくまで飲み会などの飲酒体験と他の体験を比較して、飲まないという判断が下されているという見方が正しいように感じる。


►嗜好性の変化


最後は嗜好性の変化だが、これは前回も若者にしぼって検討していたため、重複は避けたい。


ただ、先ほどの健康観のところでもふれたように、現代の若者にとってお酒はなくてはならない存在ではなく、他の娯楽と同様に一つの選択肢にあるということが大事なのかもしれない。


そのため、ただのビールではなくクラフトビール、ただワインを飲むのではなく面白いイベントに参加し、ストーリー性のあるものや造りにこだわったものを消費したいと考え、そういったイベントには積極的に参加するため、結果として嗜好性が変化していきたのかもしれない。


 

総括すると、若者がアルコールから離れていっているというのは間違いないように思う。


その背景には、SNSの普及によってお酒のネガティブな側面がこれまで以上のスピードと規模で拡散・共有されてきたことや飲酒が余暇時間の娯楽の一つとして捉えられるようになったことが推測される。


逆に言えば、お酒が他の娯楽に負けない価値体験を若者に提供できるのであれば、まだまだ盛り返す可能性もあり、若者を引き戻すことができるのかもしれない。


▶関連記事を読む

『データでたどる国内アルコール離れの実態』 https://bit.ly/2LSJ8d1

『国内アルコール離れを説明する四つの要因』 https://bit.ly/3c0NZmM

『アルコール離れの着地点とノンアルコールの課題』 https://bit.ly/2WYRk1H


参照サイト

『酒類業界の現状と将来展望』日本政策投資銀行

『経済産業省 大臣官房 調査統計グループ 経済解析室調査結果』

e-stat 政府統計の窓口

『食の志向 「健康志向」が12半期連続で最多回答』日本政策金融公庫

『「若者」の意識・行動からヘルスケア市場の未来を考える』電通報

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