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日本に「飲めない人」は4割いる。それでも、ノンアルコール市場が伸び悩む理由。

日本には、お酒を飲めない人が思っている以上に多い。


厚生労働省の委託で実施された2022年度の「飲酒実態やアルコール依存に関する意識調査」(久里浜医療センター)によると、過去1年間に飲酒経験があると答えた人は全体の55.5%にとどまった。裏を返せば、約44.5%——成人のほぼ2人に1人——は、この1年でお酒を口にしていない計算になる。


飲食店の視点からすれば、これは無視できない数字だ。テーブルの半分近くが「飲めない客」である可能性がある。


では、この「飲めない層」はノンアルコール飲料市場の追い風になっているのか。データを見る限り、答えは単純ではない。


日本に「飲まない人」は4割いる。それでも、ノンアルコール市場が伸び悩む理由。
「飲まない」と「飲めない」は、まったく別の話だ

日本の非飲酒者の多くが「飲まない」のではなく、「飲めない」という事実がある。


アルコールを摂取すると顔が赤くなり、動悸や吐き気を覚えるフラッシング反応は、アルデヒド脱水素酵素(ALDH2)の働きが弱い人に起きる。この体質は東アジア人に多く、日本人の約4割が該当するとされる。体質的にお酒が飲めない人が、人口の一定割合を構造的に占めているのが日本市場の特徴だ。


この「飲めない人」にとって、ノンアルコール飲料は「お酒の代わり」ではない。そもそもお酒という選択肢がないため、ノンアルコールを選ぶことへの積極的な動機が生まれにくい。

「飲まない人」はドリンクにお金を使わない

この構造は、飲食店の売上に直接影響する。


ホットペッパーグルメ食総研の調査によると、体質的にはお酒を飲めるが普段はほとんど飲まない人(n=442)のうち、居酒屋でお酒を飲まないときに「有料ドリンクを注文しない」と答えた人は21.1%にのぼった。5人に1人は、水やお茶だけで済ませるということだ。


飲食コンサルタントの指摘によれば、居酒屋の売上に占めるドリンクの比率は約40%。アルコールを飲む客は何杯もおかわりする一方、ソフトドリンクを複数杯注文する客は少ない。


「飲まない人が増える」ことは、客数の問題だけでなく、客単価の問題でもある。


「飲めないから飲まない」層が多い日本では、非飲酒者の増加が必ずしもノンアルコール飲料の需要増に直結しないのはこのためだ。

欧米で起きていること——「飲める、でも飲まない」という選択

対照的なのが、欧米で広がるソーバーキュリアス(Sober Curious)と呼ばれる動向だ。


ソーバーキュリアスとは、体質的にはお酒が飲める人が、健康・パフォーマンス・マインドフルネスといった理由から、意識的にアルコールを控えるライフスタイルを指す。「飲めないから飲まない」のではなく、「飲めるけど、今日は飲まない」という積極的な選択だ。


IWSRの2023年調査では、主要10市場のノンアルコール飲料消費者のうち、43%が「場面に応じてアルコールと飲み分ける」層(代替飲用者)であることが確認されている。この層は飲み物に対する関与度が高く、品質・ブランド・価格に対してお金を払う意思がある。


ノンアルコールスピリッツやノンアルコールワインといった高単価カテゴリーが欧米で育っているのは、この「積極的に飲まない」層が市場を牽引しているからだ。英国では、ノンアルコールスピリッツの販売量がテキーラ(フル)を上回るまでに成長している。

飲食店に問われていること

この状況を、飲食店の設計として読み直すとどうなるか。


「飲まない客」を、単に「ドリンクを注文しない客」として扱うのか、「選びたくなるものがあれば注文する客」として設計するのか——その差が、客単価と満足度の両方を決める。


ホットペッパーグルメ食総研の調査では、「飲みたいと思うものがあれば注文する」と答えた人は40.3%にのぼった。「注文しない」の21.1%と合わせれば、飲まない客の6割以上は、メニューの内容次第で注文するかどうかが変わる。


「飲めないから、水でいいや」を「これ、飲んでみたい」に変える設計——それがノンアルコールメニューに求められている本質だ。消極的な非飲酒者が多い日本市場だからこそ、「選ばせる」ことの価値は大きい。


参考資料

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