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ノンアルコールはビールだけですか?——日本市場が見落としているもの

日本のノンアルコール飲料市場は、いま確かに成長している。


いまや飲食店の棚にノンアルコールビールが並ぶのが当たり前になり、コンビニのノンアルコールコーナーは年々充実している。


ただ、その成長の中身を見ると、ひとつの偏りが浮かび上がる。


ノンアルコールはビールだけですか?——日本市場が見落としているもの
伸びているのは市場だけで、カテゴリーは広がっていない。

サントリーの推計データでカテゴリー別の内訳を確認すると、2025年見込みでノンアルコールビールテイスト飲料は3,615万ケースと、市場全体の約76%を占める。


RTDテイスト飲料が992万ケース(約21%)、ワインテイスト飲料が119万ケース(約2.5%)と続くが、ビール以外のカテゴリーを合わせてもまだ市場の4分の1に届かない。

グローバルでは、何が起きているか

IWSRが2023年データをもとに集計した、主要10市場(オーストラリア、ブラジル、カナダ、フランス、ドイツ、日本、南アフリカ、スペイン、英国、米国)のノンアルコール飲料カテゴリー構成では、ビール+サイダーの合計シェアが72%だった。


ここで注意が必要なのは、IWSRにおける「サイダー(Cider)」は、日本語の炭酸飲料ではなく発酵リンゴ酒(ハードサイダー)を指すという点だ。リンゴ酒はドイツ・英国・米国など欧米市場では一定の存在感を持つが、日本の市場にはほぼ存在しない。つまり日本と同じ「ビールのみ」の基準で比較すれば、グローバルのビール単独シェアは72%をさらに下回ると推計される。


日本のビールテイスト76%に対し、グローバルのビール単独シェアはそれより低い——この時点で、日本市場のビール偏重はすでに浮かび上がる。

オーストラリアでは、何が変わったか

その差がより鮮明に表れるのが、オーストラリアだ。


ANZ銀行が2024年に発表したFood for Thought Reportによると、2023年のオーストラリアのノンアルコール飲料販売に占めるビール系の割合は約45%だった。日本の76%と比較すると、30ポイント以上の開きがある。


残りの55%はワイン、スピリッツ、RTDが占めており、IWSRのオーストラリア市場レポートでは「ビールが依然として最大シェアを持つものの、ワイン・スピリッツ・RTDが急速にシェアを侵食している」と分析されている。特にノンアルコールRTDは2022年単年でほぼ4倍に拡大しており、成長速度という点でもビール以外のカテゴリーの勢いは際立っている。


なぜオーストラリアでここまで多様化が進んでいるのか。


IWSRは背景として、若年層の参入と製品イノベーションの広がりを挙げている。ミレニアル世代・Z世代はノンアルコールスピリッツやRTDから飲み始める傾向があり、そうした需要に応える形でブランドが相次いで市場に参入した。

日本でも、動きはある

ただ、日本市場が止まったままかといえば、そうではない。


サントリーのデータでは、ノンアルコールRTDテイスト飲料が2021年の672万ケースから2025年見込みの992万ケースへと4年間で約48%増加している。同期間のビールテイスト飲料の伸び(3,323万ケース→3,615万ケース、約9%増)を大きく上回る成長率だ。


さらにサントリーの2024年調査では、ワインテイストやカクテルテイストの飲用経験率が若年層を中心に上昇していることも確認されている。


多様化の芽は、すでに日本にもある。ただその規模は、まだ小さい。

飲食店・バーが今考えておくべきこと

この状況を、飲食店やバーの視点から読み直すとどうなるか。


ノンアルコールの棚やメニューを「ビール1〜2種類で構成する」という設計は、いまのところ日本の市場構造とは一致している。


だがオーストラリアや欧米の先行事例が示すのは、カテゴリーの多様化は比較的短期間で進むという事実だ。ノンアルコールスピリッツやRTDを試すのは、まず若い客層からはじまる。その客層が「ビール以外の選択肢」を外食の場でも求めはじめたとき、対応できているかどうかが問われる。


ノンアルコールビールを1種類置くことが「対応済み」だった時代は、すでに終わりに近づいている。問いはむしろ「ビール以外のノンアルコールを、どう設計するか」に移りつつある。


参考資料

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