top of page

ノンアルコールを飲む人の9割は、お酒も飲む——「飲まない人のための飲み物」という誤解

飲食店がノンアルコール飲料を導入するとき、こんな前提で動いていることが多い。


「飲めない人、飲まない人のために用意する」―ドライバー、妊婦、下戸、禁酒中の人——いわば「例外的な客」への対応として。


だがこの前提が、ノンアルコールの可能性を狭めているかもしれない。

ノンアルコールを飲む人の9割は、お酒も飲む——「飲まない人のための飲み物」という誤解
92%が、アルコールも飲む

NielsenIQが2025年に発表したレポートで、興味深いデータが示された。米国でノンアルコール飲料(ビール・ワイン・スピリッツ)を購入した人のうち、92%が同時にアルコール飲料も購入していた。


つまり、ノンアルコールを選ぶ人の大半は「お酒が飲めない人」ではない。お酒も飲む人が、その日の気分や場面に応じてノンアルコールを選んでいる。


NielsenIQはこの傾向を「禁酒ではなく、選択の拡張」と表現している。飲まないのではなく、飲み方を選んでいる。

メニューの現場でも、同じことが起きている

消費者データだけではない。飲食店のメニュー側でも、変化の兆候は数字に表れている。


Datassentialの調査によれば、ゼロプルーフカクテル(モクテル)はこの4年でメニュー掲載数が233%増加した。


また同調査では、消費者の37%が週1回以上モクテルを飲むと回答している。


注目すべきは、この需要を作っているのが「お酒を飲まない人」ではないという点だ。多くは普段からアルコールを飲む人が、ある場面でノンアルコールを選んでいる。

「節制」から「選択」へ——何が変わったのか

少し前まで、ノンアルコールを頼む行為には「飲めない事情がある」という含意があった。周りに合わせられない後ろめたさのようなものすら、あったかもしれない。


その空気が変わりつつある。


背景にあるのは、飲み方そのものへの意識の変化だ。


「飲む量を減らす」のではなく「いつ、何を、どのように飲むかを自分で決める」という発想。海外では "sober curious(しらふへの好奇心)" と呼ばれる潮流だ。


この変化を体現しているのが、ゼブラストライピング(アルコールとノンアルコールを交互に飲む飲み方)の広がりだ(※「ゼブラストライピングって知ってる?」参照)。


飲まないのではなく、場面と気分に合わせて使い分ける。ノンアルコールは「妥協の選択肢」から「積極的な選択肢」になりつつある。

「例外対応」から「メニューの設計」へ

この変化が飲食店に何を意味するか。


ノンアルコールを「飲めない人への配慮」として置いている店と、「選びたい人のための設計」として組み込んでいる店では、アプローチが根本的に異なる。


前者は「あれば十分」だが、後者は「何を、どう、いくらで出すか」まで考える。


92%がアルコールも飲む、という事実は、ノンアルコールのターゲットが「テーブルの一部の人」ではなく「テーブルにいる全員の可能性がある」ことを意味している。


ドライバーへの対応ではなく、食事体験の設計として——そう捉えたとき、ノンアルコールのメニューの作り方は変わる。


参考資料

bottom of page