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蒸留ってなんだ?

最終更新: 2019年12月11日






水蒸気蒸留を用いるノンアルコールスピリッツやジンやウォッカ、焼酎といった蒸留酒、そもそも蒸留って何だろう?なんで必要なんだろう?という素朴な疑問について考えたい。


本格焼酎造りの場合のように、アルコール度数を上昇を目的として蒸留するのは合点がいく。しかし、ジンのように最初からニュートラルスピリッツを使う場合に蒸留をする目的は?


液体にボタニカルを漬け込んでおけば、香気成分などを抽出することは可能である。(特に、アルコールは多くの香気成分を溶かす性質を持っている)にもかかわらず、さらに蒸留する意味はどこにあるんだろう?


改めて考えだすと、(私自身が)よくわかっていなかった蒸留の仕組みについて考えていく。


蒸留 VS 抽出

ノンアルコールスピリッツは『ノンアルコールスピリッツの蒸留』でも見たように、水蒸気蒸留によってボタニカルから香気成分を抽出しており、多くのクラフトジンはボタニカルを漬け込んだニュートラルスピリッツを蒸留し香気成分を取り出している。


ただ浸漬(infusion / steeping)してから抽出するのと、蒸留による抽出では何が違うのだろうか?


そもそも、ボタニカルなどの成分が溶け出すということはどういう状況なのか考えてみる。


香気成分はボタニカルの細胞内外の水や脂質に溶け込んでおり、細胞の破壊などにより引き出される(あるいは細胞が破壊されることで酵素の影響により香気成分が生じる)。


では、なににより細胞は破壊されるかというと、外圧(外部刺激)や熱である。


植物は様々な箇所に芳香成分を有しているが、浸漬の際、ボタニカルが破砕されない場合は、表面部分に存在する芳香成分の分泌腺などごく限られた箇所から香気成分を抽出することとなる。


一方、破砕される場合を考えても、蒸留のように熱によるボタニカル全体への影響と比較すると局所的な刺激となってしまうので、どうしても抽出できる芳香成分は限られてしまう。


ノンアルコールスピリッツなどアルコールを使わない場合は、特にこの影響は大きくなる。


というのも、芳香成分のほとんどは脂溶性のもので水とは交じり合わない。

さらに、ボタニカルの皮部分には脂溶性のものが多く、水溶性の芳香成分は細胞内部の細胞質の水分に溶け込んでいる。


そのため、単なる浸漬ではただでさえ少ない水溶性芳香成分のうちわずかしか抽出することができない。


その点、アルコールは水と油の両方を溶かす、水溶性と脂溶性の役割を持っているため、より多くの芳香成分を抽出し溶け込ませることができるのである。


その他、抽出の利点を挙げるとしたら、濾過の手間を省けることだろうか。

一度気化させ、液化することで、浸漬の場合であれば問題となる微小な固形成分を効率的に分離することができる。


結論づけると、ボタニカルに均一に作用することのできる熱を利用すること(そして熱により揮発した成分を逃がさないこと)が蒸留が浸漬よりも優れた点ということになる。


そして、その背景にはボタニカルの様々な箇所で作られる芳香成分と水や脂質に溶ける成分の違い、外圧と熱の影響の及ぼし方の違いなどが関係してくるのである。


参照サイト

『エッセンシャルオイルの化学』木内 文之

https://www.jstage.jst.go.jp/article/kakyoshi/51/3/51_KJ00007743406/_article/-char/ja/

『料理理科香りの性質』あまから手帖

https://www.amakaratecho.jp/ryouririka/07

『香辛料・ハーブとその香り~香気生成メカニズムとその蓄積』 飯島 陽子 / におい・かおり環境学会誌  45巻 2 号

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jao/45/2/45_132/_pdf

『植物が香り化合物を出す仕組み,吸う仕組み 単純拡散では説明がつかない』松井健二,望月智史 / 日本農芸化学会

https://www.jstage.jst.go.jp/article/kagakutoseibutsu/56/2/56_560209/_pdf/-char/en

『植物の芳香分子について』一般社団法人日本植物生理学会

https://jspp.org/hiroba/q_and_a/detail.html?id=1070&key=&target=


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