ノンアルコールを飲んでほろ酔い気分、アルコールが入っていないのはわかっていても、なんとなく酔ったような心地になる。
このような現象を「空酔い」と表現するらしいが、ほんとうにそんなことがあるのだろうか?
ノンアルコールがもたらすプラシーボ効果「空酔い」について今回は見ていきたい。
空酔いメカニズム
そもそも空酔いとは、どういうものなのだろうか?
お酒のような味わいのものを飲んで、ほんのり気持ちよく、ほろ酔い気分になる。
いくつかの文献を見ていくと、大きく二つの空酔いのメカニズムがあることがわかってきた。
ノンアルコールの味わいや香りを脳が誤認識して酔ったような状態となる
アルコールだと期待して飲むことで、ノンアルコールでも酔ったような状態となる
一番目は、比較的よく言われていることなのではあるが、ノンアルコールの味わいや香りを脳がアルコールだと錯覚することで、酔ったような状態となることである。
しかし、これを裏付けるような実験結果や論文はあまり見つからず、どこまで科学的に実証されているのかは不明である。
二番目は、ノンアルコールでもアルコールといって出されることで、酔ったような状態になることである。いわゆるプラシーボ(偽薬)効果はこちらにあたる。
ハーバード・メディカル・スクールでプラシーボ効果について研究するIrving Kirsch氏は、プラシーボ効果の本質について、下記のように語っている。
「人がある体験を予測/期待すると、その期待がある程度まで実現する傾向がある」
つまり、アルコールだと思って飲むことで、実際にアルコールが含まれていなくても、飲酒の効果が発揮されるということである。
こちらは、比較的研究なども行われており、その中でも顕著なニュージーランドの実験を次で紹介したい。
実験
ニュージーランド、ヴィクトリア大学の二人の心理学者による実験である。
この実験では、148名の学生を対象に
半分の74名の学生には、ウオッッカトニックだと嘘をついて、
もう半分の学生には、ただのトニックウォーターだと告げ、
全員に、ただのトニックウォーターを飲んでもらった。
実験の会場もバーを模したような会場で行われ、グラスや提供するボトルもウォッカカクテルだと告げた方には、本物のカクテルやウォッカを思わせる容器を用いた。
それぞれがトニックウォーターを飲み終わったのち、ある犯罪を描写した動画見てもらい、のちにミスリードを起こしやすいよう細工された事件調書を読んでもらった。
結果は、ウォッカトニックを飲んだ(と思いこんでいる)学生は、トニックウォーターを飲んだ学生と比較して、ミスリードの情報にひっかかりやすく、記憶にもあやふやになりがちであった。
実験の最後に、ウォッカトニックを飲んだ学生に、今回の実験がプラシーボ効果を観測するためのものであり、実はただのトニックウォーターしか提供していないことを告げると、本当に酔っぱらった気分でいた学生たちは非常に驚いたという。
この実験は、二番目の空酔いメカニズムが本当に作用することを示したわかりやすい事例である。
ノンアルコールのノセボ効果
最後に、ノンアルコールを飲む際の注意点を紹介しておく。
プラシーボ効果は、思い込みによるポジティブな効果について言及したものであるが、当然思い込みがネガティブな方向に働くこともある。
そのような場合、プラシーボではなく、ノセボという言葉を使う。
薬の副作用などを心配し過ぎて、本来の薬の効果でない副作用までをも引き込んでしまうことである。
例えば、完全にアルコールの入っていないノンアルコールを飲んでも、酔っぱらっているのではないかなどと過度に思い込み過ぎると、実際に症状として近しいものが出てしまうということである。
気負うことなく、気楽に楽しみ、気持ちよくなれたらラッキーくらいに付き合うのが一番好ましいのかもしれない。
参照サイト
"'Fake alcohol' can make you tipsy" BBC News
"GETTING DRUNK ON EXPECTATIONS" Pacific Standard
"Nonalcoholic Beverages" DrugRehub.com
Southern California Sunrise
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