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2019年8月8日

Geraniumのノンアルコールドリンク

前回のイギリス、Restaurant Gordon Ramseyに続き、今回はデンマーク、コペンハーゲンの三ツ星レストランGeranium、Virginia Newtonディレクターのご協力のもと、ノンアルコールドリンクの一端をご教示いただいた。

ゴードン・ラムゼイとは、また違ったアプローチを見ることができたので、紹介していきたい。

ブラックベリー × ジュニパーベリー × ブナ

ブラックベリーにジュニパーベリー、ブナの木と、イメージがつきづらい、面白い並びのこのドリンク。

そもそも、ジュニパーベリーやブナの木はどう活かすのかというのが、最初の疑問だった。

漬け込んで成分を抽出するのか?ジュニパーベリーを漬け込んで、ブナの木の樽にで熟成でもさせるのか?

答えは、下の図である。

そう、予め燻したブナの枝とジュニパーベリーの煙でグラスをマスキングするのである。

メイキングの全体像(日々、試行・実験を繰り返しており、いわゆるレシピは存在しないらしい)が分かったところで、味について考えていく。

ブラックベリーはワインでもおなじみの表現だが、ジュニパーベリーというとジンのイメージが強く、ブナ、、、という感じだが、背後にどのような考えがあるのだろうか。

経験則で考えてもなかなか、この組み合わせにはたどり着かない。

しかし、香り成分に目を向けてみると、この組み合わせの意味がわかってくる。

ジュニパーベリーの主要香り成分は、モノテルペン炭化水素類といって、α-ピネン、ミルセン、β-ミルセン、α-ミュアレン、サビネン、リモネンなどを含んでいる。

このような香り成分に近いものが、実は杉である。

杉の成分は、ピネン、ネロリドール、サビネン、カルボン、ミルセンなどであり、ピネン、ミルセン、サビネンなど共通項を多く持つ。

そして、残るブナだが、実はワインの樽でも有名なオークはに使われ、ブナ科コナラ属の総称である。

こうして見ていくと、ブラックベリー、ジュニパーベリー、ブナという一見不思議なつながりも、黒いベリー系果実、杉、樽というニュアンスに置き換えることができ、おそらくカベルネ系の品種をモチーフにノンアルコールを作っていることが分かる。

グリーンアップル × タイム

次はグリーンアップルとタイムである。

下記の写真を見るに、まずグリーンアップルのジュースをシェイクし、マイクロバブルを作り出し、最後にガーニッシュとしてタイムを添えていることがわかる。

シェイクには、冷却や攪拌といった効果以外に、極微細な泡を作り出し、甘みや酸味を抑えて、味わいをまろやかに落ち着かせる効果があると言われている。

実は、このアップルとタイムの組み合わせはカクテルの世界ではしばしば見られる組み合わせである。

カクテルの場合は、シェイクされることは少なく、ビルドで作られることが多い。

ノンアルコールということもあり、テクスチャを寄せに行った結果としてシェイクをするに至ったのかもしれない。

Geranimu的アプローチ

以上から、Geraniumのノンアルコールドリンクの舞台裏を想像してみる。

ブラックベリーのものも、グリーンアップルのものも最終的な到達点が存在していたように思う。

そして、その最終的な像を要素分解しノンアルコール的な要素に変換していく、このような逆算的な方法論がGeraniumで取られている一つのアプローチ方法ではないかと愚考してみる。

特徴的な点は、到達点までの因数分解を科学的な視座からも考案している(ように思われる)点である。

それにより、普通なら思いつかない面白い組み合わせを実現しているのかもしれない。

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参照サイト

Geraniumu http://www.geranium.dk/en/