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ノンアルコールメニューの価格、どう設定する? 海外の飲食店に学ぶ考え方

「ノンアルはアルコールより安くすべきでは?」


ノンアルコールメニューの導入を検討する飲食店から、この疑問をよく聞く。


直感的にはもっともな問いだが、海外の先進事例を見ると、この前提自体を見直す動きが広がっている。

ノンアルコールメニューの価格、どう設定する? 海外の飲食店に学ぶ考え方
「安いはず」という思い込みを、まず解きほぐす

ノンアルコール飲料はアルコール原料が不要な分、コストが低いと思われがちだ。しかし実際はそうではない。


アルコールには香気成分を溶かし込む溶媒としての役割がある。これがない分、ノンアルコール飲料では香気成分の抽出により多くの原料と手間がかかる。


製造工程が複雑になるケースも多く、高品質なノンアルコールスピリッツの製造コストがアルコール飲料を上回ることも珍しくない。


加えて、提供側のオペレーションコストも見落とされやすい。スタッフがフレーバーの特性や食との相性を説明できるよう訓練するコスト、ハウスメイドのシロップやティンクチャー(ハーブ抽出液)などの手作り素材を使う場合の仕込みコスト。これらは原材料費には現れない。


「コストが低いから安く売れる」という前提は、必ずしも正しくない。

価格を下げるより、価値を上げる

海外の先進事例に共通するのは、ノンアルコールを「代替品」ではなく「体験のひとつ」として設計するアプローチだ。


Tempo by Hilton(ヒルトン系列)では、アルコールカクテルとノンアルコールカクテルを"Spirited and Free-Spirited"として同一メニューに並べる「ミラーメニュー」を採用している。同じグラス、同じプレゼンテーションで提供することで、ノンアルコールを選ぶことが「我慢」ではなく「対等な選択」として成立する設計だ。


こうした設計が収益にも直結している。アメリカの飲食店向けデータ会社Entegraによると、2024年に米国の飲食店でノンアルコール飲料の売上が前年比30%増を記録。


年間売上200万ドル規模の店舗では、ノンアルメニューの拡充によって平均9万5千ドルの売上増が確認されている。

「何を一緒に払っているか」で価格は決まる

消費者が飲み物に払う価格は、液体そのものへの対価ではない。グラスの質感、空間との調和、スタッフの説明、食との相性——そういった体験全体への対価だ。


これはアルコール飲料も同じだが、ノンアルコールにはもう一つの文脈がある。「飲まない選択をしていても、場の空気から外れない」という安心感だ。Dry Januaryや健康意識の高まりを背景に、この価値を求める客層は確実に増えている。


TouchBistroの2025年レストラン業界レポートによると、40%の飲食店がノンアルコール飲料のメニューを拡充する予定と回答している。この動きが加速する中で、価格設定の「上手さ」が競合との差別化になっていく。

日本の業務店に向けて

「ノンアルコールは価格を低く抑えるもの」という意識が根強い日本の業務店でも、この発想の転換は着実に求められてくる。


原価だけで価格を決めると、ノンアルコールメニューは粗利の低いポジションに甘んじやすい。しかし「アルコールと同じ土俵で語れる飲み物として設計する」という視点を持てば、ノンアルコールは売上を補うための選択肢ではなく、店の価値そのものを底上げするカテゴリーになり得る。


参考資料

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