ノンアルコールという着地点
第一回、第二回と飲酒離れを見てきた。
第三回は、多くの人がアルコール離れたことで、ノンアルコール市場が賑わっているかという問題である。
そもそもノンアルコール市場はいつ頃できたかというところから見ていこう。
1%未満の低アルコール飲料の歴史は意外と古いが、ここではノンアルコール市場の誕生をキリンが0.00%のノンアルコールビール「キリンフリー」を発売開始した2009年をスタートとしたい。
上図は、サントリーによるノンアルコール飲料市場の売上推移である。2012年までは順調に伸びているが、それ以降は頭打ちという状況である。
ノンアルコール業界の課題
第一回で飲酒離れの切実な現実を見てきた割には、あんまりノンアルコール市場が拡大していない。もっとも考えやすいのは、味わいやマーケティング面(パッケージデザイン等)における品質が今一歩ということだろう。
酒類の消費実態は、家庭用:外食用:贈答用=40:55:5といわれている。このうち、特に外食用、贈答用は機能面以外の付加価値が必要不可欠となってくる。
この数字が潜在的にノンアルコール市場にも適応されると考えるなら、現在の機能性に特化したノンアルコール商品が、外食シーンや贈答用で積極的に選ばれることは少なくなってくるため、市場は余力を残したまま拡大しきれずにいるという見方もできる。
もう一つの原因としては、消費者認知の問題が挙げられる。
ノンアルコールを飲むシーンを想像してもらいたい。
おそらく、多くの人がノンアルコールを飲まざるを得ない状況を想像したのではないだろうか?運転中や妊娠中、休肝日など理由はそれぞれあるだろうが、現状のノンアルコールは完全に仕方なしに/妥協して選ばれているネガティブオプションである。
これは、別の市場で類似のケースを確認することができる。それは、栄養ドリンク市場である。栄養ドリンク市場は2001年をピークに2016年までの16年間で約30%も市場規模を縮小している。原因の一端は、レッドブルやモンスターをはじめとするエナジードリンク市場の拡大である。こちらの市場は、2010年から2016年まででおよそ6倍となっている。
エナジードリンクの成功の要因の一つとして、一般的に栄養ドリンクが、マイナスの状態からゼロに戻すお薬的なイメージなのに対して、エナジードリンクはゼロからプラスにあげていくポジティブなイメージであったことが挙げられる。
ノンアルコールも現状がネガティブオプションであるのであれば、新しいラベリングでポジティブオプションへと脱皮するというのも一案かもしれない。
▶前回の記事を読む
データから見る、国内のアルコール離れの実態 https://bit.ly/2xPyyMG
国内のアルコール離れを説明する四つの要因 https://bit.ly/2XQQTn2
▶関連記事を読む
世界のノンアルコール市場動向 https://bit.ly/32c8WYo
参照サイト
ノンアルコール飲料に関する消費者飲用実態調査 サントリー ノンアルコール飲料レポート2017
『これからの酒類需要』佐々木定
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