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禁酒運動の亡霊






当ブログでも度々取り上げている禁酒法や禁酒運動。


1933年の禁酒法撤廃を区切りとして説明が終わることが多いが、本当に過去のものになったのか。


1933年以降も人知れず続く、禁酒運動の亡霊を追ってみる。


Post1933年

まずは禁酒法撤廃の後、どのような動きが起こったかを見ていく。


1933年の禁酒法撤廃は、あくまで合衆国連邦の取り決めであるが、アメリカは州が強力な権限を持つ。


実際、1933年以降も18もの州で禁酒法は持続され、2/3の州で地方条例レベルで禁酒法に準ずるような規則が定められた。


そういう意味では、本当に禁酒法が撤廃されたのは最後の牙城ミシシッピ州が撤廃をくださした1966年と、連邦レベルでの撤廃から33年も後のことである。


では、1966年を機に落ち着いたのかと思うと、そうでもない。


ベトナム戦争の向かい風と追い風

この時期、多くの若者がベトナム戦争へと駆り出され、世間では「18歳を戦争に行かせるのに、一方で18歳ではお酒を購入することもできないなんておかしい」という論調が出てきた。


これに呼応して多くの州は、飲酒年齢を引き下げた。


当初は、禁酒運動にとっては向かい風のようにも思えたこの政策は、飲酒年齢引き下げに伴い若者の飲酒による問題が顕在化していくにしたがって、追い風へと変わっていった。


今日のネオ禁酒運動

そうは言っても、今日の禁酒運動は19、20世紀のものとはまた違う形をとっている。


19、20世紀当時は、飲酒は「悪癖」「道徳的堕落」「罪」などという言葉で語られ、お酒そのものに悪が潜んでおり、そのためお酒を完全に禁止しなければならぬというような原理主義的な価値観がもとになっていた。


しかし、21世紀においては、もう少し理性的に語られている。


曰く、人は必ずしも正しい選択をすることはできないため、法律の面から規制を設ける必要があると主張している。


税制改革や販売規制、宣伝広告の見直し、提供時間の制限、提供アルコール度数の制限など様々な提唱を行っている。


さらに、実は禁酒運動に加担しているのは個人だけではない。


WHOはアルコールの規制を強めており、アイルランドでは今月(2019年11月)からアルコールの宣伝広告を事実上禁じており、ニューヨークなどでも政府所有のものへのアルコール広告を禁じている。



宗教や道徳観から始まった禁酒運動は、政治的色彩を帯び、大戦を背景に一時は結実した。経済的理由から連邦法は撤回されるも禁酒法は確実に多くの人の共感を生んだ。


一方、戦争を通じて飲酒の敷居が下がったことが、飲酒運転など様々な社会問題を引き起こし、結果として今日の禁酒運動の残り火が再燃したと考えられる。


参照サイト

"Neo-temperance movement accused of economic illiteracy over alarming study"

Drinks Retailing News

http://www.drinksretailingnews.co.uk/news/fullstory.php/aid/18010/Neo-temperance_movement_accused_of_economic_illiteracy_over_alarming_study.html

"The War On Alcohol: Is This Prohibition 2.0" Forbes

https://www.forbes.com/sites/joemicallef/2019/05/04/the-war-on-alcohol-is-this-prohibition-2-0/#3d8aa3c840ae

"Temperance Movement Today in US: Neo-Prohibitionism" Alcohol Problems and Solutions

https://www.alcoholproblemsandsolutions.org/temperance-movement-today-us-neo-prohibitionism/

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