モクテルをソフトドリンクやジュースなどの延長線上として扱うには、いくらか無理がある。
Mock:〈人・言動を〉まねてあざける,まねてばかにする.
という意味合いとは裏腹に、現在国内外を問わず、モクテルには真摯な視線が注がれている。
バーのモクテル、レストランのノンアルコールカクテル
まず、区別しておきたいのが、モクテルとノンアルコールカクテルの違いについてである。
正式な区別があるわけではないが、あくまで便宜的に、以下のように区別しておく。
ノンアルコールカクテル:レストランで食事と一緒に提供されるワインの代替
モクテル:バーにおいて単体で楽しむことを想定したカクテルの代替
ノンアルコールカクテルは料理に寄りそうことが求められるため、モクテルよりもフレーバーや味わいの繊細さが求められる。
一方、モクテルはそれそのものとしての完成度がより重要視され、一杯で楽しめるようにアクセントとなる味わいなどが求められる。
そして、今回は、モクテルを念頭に話を進めていく。
アルコールの役割とモクテルのジレンマ
言うまでもなく、アルコールが入っていないカクテルをモクテルと総称している。
しかし、先にも書いたようにモクテルはジュースやとは一線を画したお酒のように楽しむことのできるものである。
ここに、モクテルのジレンマが存在する。つまり、アルコールなくしてアルコールのニュアンスや満足感を消費者に届けなくてはいけないのである。
そこで、アルコールの及ぼす効果を見ていくことで、モクテルを作る際の指標にしていただければと思う。
アルコールの主な効果は四つある。甘み、苦味、熱感、収斂性である。それぞれ見ていく。
まずはエタノールの味わいとしての苦みと甘みが存在する。
ある研究の結果では度数が高くなるとより甘みを感じるようになると言われている。
味わいを感じた後の感応として、熱っぽさを感じるに違いない。スピリッツを飲んだことがある人なら誰もが納得するだろう。これは、味覚の反応というよりも痛覚的刺激なので辛みなどに近い。これが熱感である。
そして、最後の一つが収斂性である。タンニンの強い赤ワインなどがイメージしやすいが、舌の乾く、あのイメージである。
繰り返しになるが、以上の甘み、苦み、熱感、収斂性がアルコールの役割であり、モクテルを作る際に意識的に作り出さなくてはいけない四つの指標である。
*もちろん、アルコールの妙味は、ここでは考慮していない樽や化学成分なども含む、多様な要素の複雑な結びつきにあるのは間違いないが、収集つかなくなりそうなので今回はこの四つに限定する。
四要素の演出方法
では、上記の四要素をいかに表現していけばいいのだろうか。
真っ先に考えやすいのは、甘みだろう。コーディアルをはじめ、果実、砂糖などが挙げられる。
苦みは収斂性とセットで考えてもいいかもしれない。タンニンという観点だと、茶葉や柿などが材料として考えられる。茶葉は抽出の度合いでタンニンの量を調整することができる。
柿には、柿渋と呼ばれる可溶性タンニンが含まれているので、使いようによっては苦みや収斂性の表現に使えるかもしれない(干し柿の場合は、タンニンが水に溶けないように性質変化しているためこの用途には向かない)。
他に、苦みとしては、ハーブなどの漬け込み・抽出が考えられる。また、コーヒーをやカカオも一案として考えられる。
最後に、熱感についてである。近しいのは、生姜やトウガラシなど辛みを有する素材の活用かと思う。あるいは、ピーマンやパプリカなどの野菜も使い方やものによっては辛みを感じる場合がある。使いようによってはよいアクセントになるかもしれない。
さいごに
しかし、なんと言っても、そもそも美味しいのか?、これが何よりも大事な指標であることは間違いない。
参照サイト
"Bitter and sweet components of ethanol taste in humans" Drug and Alcohol Dependence Volume 60, Issue 2, 1 August 2000, Pages 199-206
"What Makes a Great Mocktail?" SERIOUS EAT
"Mocktail Science: Easy Substitutes for Complexity" SERIOUS EAT
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