ワインマーケティングについて考えるとき、どういうチャネルで発信を行い、どのようなところで販売しているかということも、非常に重要なマーケティング要素ではある。
しかし、今回はワインそのものが、どのようにプロモーションされているかについて今日は考えていきたい。
ワインマーケティングの類型化
ワインコンテンツのマーケティング切り口を類型化すると、
以下のように分けることができるのではないだろうか。
●インクルージョンコンテンツ
〇ソフトコンテンツ
‣原材料
‣産地/テロワール
‣栽培
‣醸造・熟成
‣成分
‣生産者
‣流通・管理
〇ハードコンテンツ
‣容器
‣ラベルデザイン
●アカンパニーコンテンツ
〇ブランドコンセプト
〇第三者評価
〇逸話・歴史
〇価格
〇季節性
〇ペアリング
●インクルージョンコンテンツ
ワイン内包コンテンツは、わたしたちが実際にお金を払って購入している容器+液体にまつわるマーケティング切り口のことである。
その中の、液体にまつわる方をソフトコンテンツ、容器にまつわる方をハードコンテンツとする。
〇ソフトコンテンツ
実際にワイン製造の過程、いわばワインの内側部分である。
本来の品質はここで決まるため、生産地での栽培からはじまり収獲、醸造、熟成、流通までのプロセスが該当する。
原材料
ワインはブドウで決まるという言葉もあるように、いかにそのブドウが優れているかということを打ち出すようなタイプである。
または、ブドウの品種への言及もここにかかわる。
この後の産地やテロワールと絡めて言及されることがほとんどである。
産地/テロワール
ワインがどのようなところで造られているかについての言及。
大きな国のくくりであることもあれば、畑などのごく小さな場所についての打ち出しの場合もある。さらには、サントリー社のダークホースのように、あえて国を統一しないことをアピールポイントに据えている場合もある。
テロワールは、その地域のミクロクリマ(微気候)のことであり、その土地の土壌、河川、気候など、ブドウの育つ環境を総合して指す場合が多い。
栽培
ブドウの栽培にまつわる言及。
自然派ワインブーム以来は、有機農法への注目が高まり、有機栽培やビオディナミ農法への人気が高まっており、未だに強いアピールポイントとして認識されている。
醸造・熟成
ステンレスタンクや木樽など醸造や熟成設備への言及をはじめ、醸造施設の衛生面などが対象となる。
成分
1997年のポリフェノールブームなどワインに含まれる成分に着目した視点。
含有されているものへの言及もあるが、昨今はむしろ添加物など含有されていないことがアピールポイントとして成立している。
生産者
ワインの栽培や醸造にたずさわる生産者への言及。
産地・テロワールと同じく、一定の価格以上のワインについてはだいたい言及がなされている。
流通・保管
正確には、ソフトコンテンツではないが、ソフトコンテンツの品質に直接的に影響を及ぼすものとして入れている。
ワインのバックラベルにはリーファー便を用いて輸入されていることが書いてあったりと、一般というよりは、プロ向けのメッセージとして言及されていることもある。
〇ハードコンテンツ
ソフトコンテンツであるワインが入っている外側の部分。
ビジュアルはここで決まるため非常に重要なアピールポイントとなる。
容器
いかり肩のボルドーボトル、なで肩のブルゴーニュボトルなど、地域性を表現するボトルの形をはじめ、昨今では缶ワインや紙箱に入ったバック・イン・ボックスなど様々な形状の容器が出てきており、それぞれのブランドのコンセプトを表現するものとなっている。
ラベルデザイン
ロゴデザインよりもラベルデザインがイメージしやすい、前に出ている業界は他にはあまりないかもしれない。
ボルドー五大シャトーのムートン・ロートシルトなどのように毎年異なるアーティストにラベルデザインを依頼して、デザイン作りを行うブランドもある。
●アカンパニーコンテンツ
ワインの品質を左右することはないが、専門的な知識を要しないため、強い訴求力を持っているワインコンテンツに付随して紹介される情報。
〇ブランドコンセプト
ブランドコンセプトからの訴求は、大々的に行うには、ある程度の資本を必要とするため、投資分を回収できるだけの供給力がある、巨大シャンパーニュメゾンや大規模ワイナリーなどに限られる。
〇第三者評価
ボルドーワインの格付けやパーカーポイント、金賞ワインなど挙げていけば、枚挙にいとまがない。
一時期と比べると、第三者評価が重視される傾向は薄らいできたが、大手スーパーなどでの商品選定では根強く訴求されている。
〇逸話・歴史
表立って紹介されることはあまりないが、飲食店や小売店の接客の中では重宝されるポイントである。
皇帝への献上品として作られたため、底のくぼみがないルイロデレール社のクリスタルなどが良い例である。
〇価格
価格訴求はワインメーカー側が明確に打ち出すことは少ないが、インポーターなどを通じて言及される。
市場最安値をうたうドン・キホーテのボジョレーヌーボーなどが好例。
〇季節性
季節性への訴求も、ボジョレーヌーボーが最もわかりやすい例かもしれないが、春にロゼワイン、夏に白ワインといったアピールも根強く残っている。
〇ペアリング
ワインにとっての補完財である料理は、ほとんどのブランドでアピールポイントとして使われている。
ざっくりとした類型化ではあるが、おそらく上記のような切り口がワインコンテンツでは採用されているのではないかと思う。
また次の機会には、上記のような切り口をどのような方法でどのようなチャネルを使って発信しているかを確認していきながら、現状のワインマーケティングについて深掘りしていければと思う。
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