ノンアルコールペアリングの憂鬱
ノンアルコールのペアリングは難しい。
2018年に惜しまれながらも閉店した、シンガポールでも有名レストラン、アンドレのアンドレ・チャン氏もノンアルコールペアリングについて、
「典型的なフルーツジュースは料理に合わせるのは甘すぎて難しく、お茶では料理にワインが与えてくれるような新たな要素の付加が難しい。ペアリングに理想的なノンアルコールとは、料理の限界を押し広げてくれ、なおかつ料理に合うボディ、フレーバー、アロマ、テクスチャーを与えてくれるものであるべきだ。」
と述べている。
そうは言っても、需要が高まっている現在、ノンアルコールペアリングから逃れられないお店が多々あるのも事実である。
今回は、ジュースペアリングについてみていく。
コールドプレスメーカーの場合
ジュースペアリングする際の基本の考え方は、カリフォルニアにあるコールドプレスジュースメーカーEvolution Freshが参考になるかもしれない。
同社は、
ジュースのテイスト:Greens, Vegetables, Berries, Apple, Citrus, Tropical
料理のテイスト:Sweet, Spicy, Leafy, Earthy, Salty
に分類している。その上で、それぞれのテイストに合う要素を二つずつ挙げている。
Greens→Sweet、Salty ジュースが甘い場合は、肉や魚介と相性良し
Vegetables→Spicy、Earthy 特に根菜系はスパイス、土系のニュアンスと相性良し
Berries→Sweet、Leafy ミックスサラダや生ハムなどの料理に彩りを加える
Apple→Sweet、Leafy ナッツを含んだサラダや甲殻類などのシーフード
Citrus→Sweet、Salty 卵やシンプルな家禽料理と相性良し
Tropical→Sweet、Spicy 甘いものやスパイス系の料理に冷涼感を付加するのも良し
もちろん上記以外の素晴らしい組み合わせも色々あるだろう(ベリー系と鴨肉なども定番)が、ペアリングの際の定式のように考えるとよいかもしれない。
ワインライターの場合
ガーディアンのワインコラムニストも務めるワインライター、フィオーナ・ベケットはジュースペアリングについて、それぞれのジュースをワインに見立てる方法を提唱している。
彼女によると、以下のようなワインとジュースの対比がとれるそうだ。
軽めのシャルドネ/シュナンブラン:林檎、梨、ホワイトクランベリー
重めのシャルドネ:桃、マンゴー、パッションフルーツ
セミヨン:パイナップル、南国系果実
ソーヴィニヨンブラン:エルダーフラワー、レモネード
リースリング:白ブドウ、ライム、アップルタイザー
ロゼ/軽めの赤:クランベリー、赤ブドウ、スイカ、いちご
ピノノワール:ザクロ、ラズベリー、ラズベリー×クランベリー
メルロー/カルメネール/シラーズ:プラム
カベルネソーヴィニヨン:クロスグリ、ブラックベリー、ニワトコの実
上記をもとに、味わいが強すぎる場合は、適宜炭酸水やレモン果汁、柑橘果汁、氷で味わいを整えることを推奨している。
この方法は、要はアロマホイールの延長線上のものだろう。
それぞれの方法論の検討
上記二つの方法論は、それぞれ違ったアプローチに見えるが、実は非常に近しいアプローチである。
根本的には、まず定式を作って、それを個別的な例に当てはめていくという点では同一であり、どちらも演繹的なアプローチといえる。
前者のコールドプレスメーカーの場合は、料理とジュースの間で定式を作り、ペアリングの際は、まず料理をどのカテゴリーに分類するかを決め、そのカテゴリーに合うジュースを探していく、という手順である。
一方、後者は料理とワインのペアリング知識、ノウハウを前提として、ワインとジュースの間で定式を作り、料理→ワイン→ジュースの順で決定していく。
演繹的な方法論はマニュアルを作りやすくしてくれるため、考える際の骨格作りに非常に有益だが、マンネリに陥りやすい方法でもある。
知識は武器として備えておきつつ、自由に活用しながらペアリングの地平を広げていっていただければと思う。
■ノンアルコールペアリングのご紹介はこちら■
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『ドリンクペアリングの基礎アプローチ』 https://bit.ly/2YTZryh
参照サイト
"ARE INFUSIONS THE NEXT BIG THING IN DRINK PAIRING? QIN XIE ISN'T TOTALLY CONVINCED" Fiona Beckett Matching food & Wine
"ef pairing guide" Evolution Fresh
"Toasting the rise of non-alcoholic options in top restaurants"
good food Jan 26, 2016
"FOOD AND FRUIT JUICE MATCHING" Fiona Beckett Matching Food & Wine
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