コロナ禍で多くの企業が、自社ブランドの見直しを図っている。
日本で長らく愛されてきたラムブランド、マイヤーズラムの終売を発表したキリンビール株式会社のようにブランドを終わらせるというのも、一つの判断でありますが、本日はリブランディングによって活路を見出そうとした二つのブランドについてお話します。
コカ・コーラ史上最大の過ち?:ニュー・コーク
一つ目は、世界で最も愛されているドリンクといっても過言ではない、コカ・コーラ社が1985年に行ったニュー・コーク騒動です。
当時のコカ・コーラ社は、
15年にわたってコーラ飲料市場の競合にシェアを奪われ続けており、
消費者認知度も年々低下しており、
基盤となるコーラ飲料全体の人気も低迷していました
このような危機的状況において、打開策としてコカ・コーラの大元のレシピの変更に取り掛かりました。
数々の試作を重ね、20万人近くもの消費者への結果試飲をふまえての万全を期してのリニューアルであったが、蓋を開けてみれば、苦情、クレームの嵐となりました。
オリジナルのコカ・コーラは買い占めに近いような動きも起こった。
結局、ニュー・コークと並んでオリジナルのクラシックは、コカ・コーラ クラシックとして販売され、早日ニュー・コークの販売は取りやめとなった。
オリジナルのコカ・コーラはというと、ニュー・コーク騒動により消費者の愛情が喚起され、次第に往年の輝きを取り戻していったということである。
このニュー・コーク騒動にはいくつかの示唆がある。
一つ目は、消費者は企業が思っている以上に、感情的価値を重要視しているということ。(ブラインド試飲では消費者はニュー・コークを支持しながら、実際はオリジナルを支持したことから、単純な味以上のブランド価値をコカ・コーラに求めていることがわかる)
二つ目は、堅実にブランドを築き上げていれば、一時期苦境を迎えても、お客さんが支えてくれるということだ。
そして最後は、苦境に陥った時に静観するのではなく、リスクをとってでも、考え行動することで道が拓けるということである。
人気ラインの全色変更:SUQQU
次は、今日のコロナ禍という未曾有の危機に瀕して、大胆な策に出たブランド女性化粧品ブランドSUQQUについて考えてみたい。
SUQQUは、高級感のあるデパートコスメにおいて、他ブランドにないアイシャドウの配色や最近では「諭吉ファンデ」とも呼ばれる高級ファンデーション分野においても強みを出している。
一方、化粧品業界といえば、コロナ禍でデパートなどでのタッチアップ(販売員さんがお客さんに施す化粧のお試し)ができなくなり、さらにマスク着用による化粧の簡素化などで苦境に立たされている。
そんな中、SUQQUは人気ライン「デザイニング カラー アイズ」のリニューアルを今月発表した。
デザイニングカラーアイズといえば、SUQQUを象徴する配色で人気のアイシャドウシリーズであり、多くの消費者から支持を集める商品群であった。
実際のリニューアルは来年2月を予定しているということだが、今月の発表後既存商品では完売が続出し、SNS等では一部話題にのぼっていた。
この危機的な状況で最も人気と信頼の厚い商品シリーズのリニューアルは非常に大胆な戦略ではあるが、化粧需要の低下しているコロナ禍において、爆発的な需要を生み出すことに成功し、また2月のリニューアルを前に大きな話題作りにも成功したといえる。
さらに考えようによっては、少々うがった見方ではあるが、リニューアル後も復刻版として現在の人気配色を継続/復活させることも可能であり、SUQQUは、リニューアル発表時の駆け込み需要、リニューアル後の新規需要、(仮に復刻したとすれば、復刻後需要)の計三回の販売チャンスを生み出したことになる。
コロナ禍という危機的な状況だからこそ、取りえた大胆な戦略ではあるが、リスクをとった結果、そしてこれまでの堅実なブランド創りがなしえた成功と言える。
今後ますます不確実性の高い世界になっていくことは間違いない、そんな中でわたしたちができることは、平時にたゆまぬブランドを創り上げ、有事においては熟考のうえ素早く大胆な施策を打ち出すということに他ならない。
言葉にすると陳腐ではあるが、危機下でも思考を止めず、思い切った策にでた二つのブランドから学ぶことは大きいはずだ。
参考サイト
『マーケティング史に残る失敗か、はたまた戦略的な“投資”か──。 発売即“大炎上”した「ニュー・コーク」の真実』日本コカ・コーラ株式会社
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